前田敦子の男・尾上松也はなぜモテる? 「こだわりがない」男の厄介さ
このほかにも、芸の道に生きる好青年エピソードとして、「負けん気が強い」「常に新しいものに挑戦する」「大好きだった父親を早くに亡くした」ことが披露されているが、これらは中村獅童や片岡愛之助など、非名門系の歌舞伎役者がさんざん語ってきたエピソードであり、目新しさに欠ける。
松也がどうしてモテるのか、明確な答えが見つからないまま、番組は進む。冒頭の発言は、焼肉に行った松也が、事務所のスタッフのためにタン塩を焼いている最中に、焼き加減について聞かれた際の返答である。私にはこの発言こそが、松也のモテる理由に思えた。
こだわりがないというのは、「なんでもいい」という意味であり、つまり松也は「簡単」な男なのである。それに対し、歌舞伎界を代表するスター・海老蔵はベジタリアンとして知られている。ベジタリアンの少ない日本で、菜食主義を貫くのは手間がかかるという意味で海老蔵は「面倒」な男なのだ。
下世話な連想だが、これは女性に関する好みにも通じるのではないだろうか。海老蔵が浮名を流した女性の多くは女優やタレントである。結婚式直前特番で、小林麻央に「もっと痩せて」と注文をつけるなど、美貌に優れた女性をさらに自分好みに変えたいという「面倒くささ」も持っている。それに対し、松也が最近、タクシー内でキスをしていたとされる女性は、業界内では有名かもしれないが、世間では無名のアラフォー一般女性である。ブランド狙いでなく、自分がいいと思ったら、がんがん行く。松也は「なんでもいいモテ」なのである。
松也のように、ブランド狙いではない男性はラクそうだが、実はこのタイプ、なかなか結婚に至らないように思う。海老蔵のように注文をつけるタイプは、頭の中に明確な「理想」があり、課題をクリアした女に褒美を与えるので、結婚に持ち込みやすい。それに対し、松也のような「なんでもいいモテ」型は、こだわりがないだけに、なかなか1人に決めることができないのである。「なんでもいいモテ」は、「タチの悪いモテ男」とも言えるだろう。
前田は尾上との結婚を視野に入れているようだが、「あっちゃん、見切りをつけるなら、早い方がいいよ」と、老婆心ながら言いたくなる。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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