女子マンガ代表・雁須磨子『右足と左足のあいだ』が描く、男女の“言葉”のズレの妙味
【7月の注目】唯一無二のW不倫マンガ『あなたのことはそれほど』が怖すぎる!
(左)『あなたのことはそれほど』2(祥伝社)(右)『人は見た目が100パーセント』1(講談社)
8日に発売されたいくえみ綾先生の『あなたのことはそれほど』2(祥伝社)は本当にすごい作品です。登場人物全員がキモい! だけど身近にいそう! だから余計にキモい! という、サイコホラーにも近いW不倫の物語です。ちょっとしたリアリティの演出(メガネの柄が気持ち悪かったり、無邪気にカレー皿に喜んだり……)が巧みで、それらを丁寧に積み上げていった結果のこの説得力あふれる物語世界は、やはりいくえみ先生にしか描けない唯一無二のものでありましょう。昨今はやりの不倫ものの中でも頭ひとつ抜けた存在です。人によって感じ方がかなり異なるようですので、お友達と読み比べてみてもおもしろいかもしれません。
11日発売の大久保ヒロミ先生『人は見た目が100パーセント』1(講談社)は、ひたすら笑えるリケジョ系ギャグです。ファッションに疎い某企業の研究員女子3名が、残業してまで昨今のトレンドを研究し、少しでもオシャレであろう、女子っぽくあろうとする様子が「すバカしい」マンガです。それでいて、ふと「笑っちゃってるけど自分も大丈夫かしら……」と不安にさせられたりもする、本当は怖いマンガ……かもしれません。
この前後は注目作の発売ラッシュでして、10日には萩尾望都先生のSF『AWAY』1と吉田秋生先生『海街diary 6 四月になれば彼女は』(ともに小学館)、11日には小川彌生先生『銀盤騎士』4と鳥飼茜先生『おんなのいえ』4(ともに講談社)も発売されます。月末の25日には東村アキコ先生『かくかくしかじか』4(集英社)とオノ・ナツメ先生『ACCA 13区監察課』2(スクウェア・エニックス)が、30日には有間しのぶ先生『その女、ジルバ』2(小学館)が待ち構えていまして、要するに今月も大忙しなのであります。
小田真琴(おだ・まこと)
女子マンガ研究家。1977年生まれ。男。片思いしていた女子と共通の話題がほしかったから……という不純な理由で少女マンガを読み始めるものの、いつの間にやらどっぷりはまって遂には仕事にしてしまった。自宅の1室に本棚14竿を押しこみ、ほぼマンガ専用の書庫にしている。「SPUR」(集英社)にて「マンガの中の私たち」、「婦人画報」(ハースト婦人画報社)にて「小田真琴の現代コミック考」連載中。