「ノーメイクでどれだけ男を食えるか」34年間スッピンの女が、化粧を始めた意外なワケ
私は幼少時より、女の世界に対して、強いあこがれを持っている。その理由は「持てるアイテムが多いから」だ。女の人はズボンもスカートもはいていいし、色も種類も男の比じゃない。コスメにアクセと胸躍るグッズがたくさんあるし、デパートなんて、9割が女用の商品で埋め尽くされている。しかも、性の周りもにぎやか だ。生理や妊娠、そして「どの系統の女を演じて、どう男を落とすか」etc……。女という性には私をときめかせるアイテムやドラマがたくさんあるように思えて仕方ない。 男なんて童貞卒業くらいしかないし、そんなの痛みもなければ、金で解決できる話だ。味気ないったらない。
そんな選び放題な環境にありながら、ノーメイク&スカートレスで生きてきたセンパイに対し「もったいない!」という思いはあった。男世界は「軍人になれと?」と思ってしまうような地味な色の服がメインだし、アクセなんて十字架かドクロのモチーフばかり……戦死しろってか!? 「女子アイテムは色々あるんだから、試しまくればいいのに!」と、他人事ながらヤキモキしていたが、センパイは「かわいい格好をする『女の子期』はなかったですけど、『色気のある女』にはあこがれていたので、下着は色っぽいのを選んでました」とのこと。そうだよ……ランジェリーこそ女子の独壇場だよ……うらやましい!!
しかし、選択できるアイテムが多いということは、その分、気にしなければいけないチェック項目が増えるということである。「私と同じようなタイプの顔なのに、あのコは結婚できてる!」とか、「同じような体形なのに、あのコの方がモテるのは何で!?」とか。そのため女は、男よりも周りと比べる習性があるような気がする。「女の敵は女」というのも、このチェック癖が元凶だろう。「私は子ども産んだら、仕事も酒もやめたのに!」とか「私はカレシができたら、ほかでは遊ばないよ!?」とか。それらのチェックは「私、間違ってないよね?」という自己確認なのだろうが、男から見たら「めんどくさい」だろうなあ。一般から遠い位置にいるゲイで漫画家の私からしてみると「血生臭くて面白い☆」なんだけど。
今回の対談も、20代、30代、40代と、おおよそ共通点のない集まりだったが、「親との関係」「男遍歴」「美容道」を語っているうちに、お互いへの理解が深まり、大盛り上がりとなった。チェック項目が多いがゆえに、いざこざが多い女同士だが、それだからこそ、共感が得られた時の高揚感はハンパない。「1つの共感が、ほかの違和感を包み込んでしまう」というのは、まだ見ぬ世界平和への道のりのような気さえしたよ☆
世間には、化粧や整形は「ありのままではない」と見なされる風潮もある。でも私は、心から「化粧をしたい☆」と思ったのであれば、その欲求に従うことも 「ありのまま」だと思う。スッピンを卒業して、化粧を始めたセンパイには「ありのまま」に生きて、血の通ったエピソードをたくさん作ってほしいものである。そして呑み屋で教えてほしい。雪の女王だって、がっつりアイメイクしてるしね☆
大久保ニュー(おおくぼ・にゅー)
1970年東京都出身。漫画家。ゲイの男の子たちの恋愛や友情、女の赤裸々な本音を描いた作品を発表。著書に『坊や良い子だキスさせて1』(テラ出版)、『東京の男の子』(魚喃キリコ、安彦麻理絵共著/太田出版)などがある。
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