自分だけの幸せを追求し、趣味を武器に“リア充”へ。人生のサバイバル術を教えてくれる本
『女ひとり海外で働いてます!』(ひうらさとる著、NHK取材班監修、KADOKAWA/メディアファクトリー)
もちろんアメリカだけでなく日本にも“めっちゃスゴい”人、爽快な人生を送る人はたくさんいる。そんな中で、海外に飛び出し、単身で仕事を続ける女性たちを取材したのが、コミックエッセイ『女ひとり海外で働いてます!』だ。
人気マンガ『ホタルノヒカリ』で知られるひうらさとる氏が、NHKとともに現地に赴き、アジアで活躍する日本人女性に取材した本書。現地の言葉どころか英語もほとんど話せないままマレーシアで起業した女性。全盲で、日常生活を現地スタッフたちに支えられながら、タイで子どものための移動図書館を立ち上げた女性。仕事内容も国もバラバラだが、実際に働いている彼女たちの姿を目にしたひうら氏のマンガを通して、海外で働くということの魅力や難しさが、普通のインタビューよりダイレクトに伝わってくる。
単身海外で働き、かつ成功している女性というと、特別に選ばれた人々を想像しがちだ。しかし、職場の人間関係や出会いのなさに悩んだり、過去の失敗を明かす彼女らの姿は、日本で働く女性たちと大きくかけ離れてはいない。限られた紙面で、彼女たちのポジティブな面を中心に取り上げているので、語られていない苦労や困難を想像する必要はあるだろう。けれども「海外で働く」という選択肢は、必ずしも“特別な人”だけに与えられた特権ではなくなっているのかもしれない。
『文化系女子という生き方』(湯山玲子、大和書房)
「日本にいるとすべて完璧を求められ、相手にもそれを求めます。でも海外では適当で不完全なことの方が圧倒的に多い」
『女ひとり』で、モンゴルで働く女性が語った海外で働く理由。完璧を求める無言の外圧が強ければ強いほど、ガス抜きとして、アイドルやBLといった趣味に熱中する人々も多くなるのは自然なことだろう。
『文化系女子という生き方』は、『四十路越え!』(ワニブックス)などで知られる湯山玲子氏による、“文化系趣味”を持つ女子が日本社会を渡り歩くための、現時点で最も親切なガイドブックだ。
文化系趣味とは、音楽やアート、小説といった王道から、マンガやゲーム、ファッションに政治研究など、あらゆるジャンルを指す。前半では、文化系女子と文科系男子の関係における「紅一点」問題、「中年男性の『面白い子がいるんだよ』に気をつけろ」など、ユーモアを交えつつ、フラットな立ち位置でジャンルを超えて文化系女子をマッピング。おそらく誰もが「こういう女いるいる」と気楽に笑い、同じ説得力を持って、自身の立ち居地の弱さ・ずるさを斬られることになるだろう。
しかし本作の最もユニークな点は、文化系趣味を、現実社会で“リア充”として生きていくための「武器」にするメリットや手順を、惜しみなく提示しているところだ。文化系趣味の多くは、現実から一時逃避するための場所として機能している。それだけでも十分としつつ、逃避にプラスアルファする“活用”を勧めているのだ。
現実逃避できるほど何かを好きになれる人は、もう一歩踏み込めば、そのジャンルのみならず、自分の人生をさらに“深読み”できる可能性を秘めている。たくさんの文化系女子と関わり、彼女たちの行く末を見てきた湯山氏による、若い世代への期待が込められた熱い一冊なのだ。
(保田夏子)