「何日も前から電話してる!」「お友達が通っているから!」入園をゴネる母親たち
前回、定員に達したため園児募集をしていないことを書きましたが、今年も去年同様、ケンカ腰で入園を迫る母親が続出しています。その中の保護者を抜粋して紹介しますね。
定員いっぱいだとHPに載せた1週間後、「何日も前から電話してるんです!」と主張する人。あらかじめスタッフには、私が不在の時に見学関連の電話が掛かってきたら必ず相手の電話番号を聞いて、折り返し掛け直すことを伝えるように言っていて、いままでこの手の連絡ミスはありませんでした。園に出勤しているけれどもほかの方の見学を行っているという時のみ、「10分後にお掛け直しください」ということはありますが、何日も前から電話をしているのに、伝わっていないことはまずあり得ません。
また、「キャンセル待ちをしていても繰り上がることは考え難いので、無駄足になってしまうので……」と遠回りに断っても、「お友逹が通っているので、見学をお願いします」と食い下がる人もいます。電話を切らせてくれないので、参考までに「お友逹のお名前は?」と尋ねると、「わかりません。同じマンションの人から聞きました」ですって。お母さん! それは“お友逹”ではなく、単なる“顔見知り”ですよ……という言葉を押し殺し、「4番目のキャンセル待ちのため、27年度は入園できない前提で見学にきてください」と言い、泣く泣く見学予約を受けましたよー。
ゴリ押しママは、入園後はモンペ(モンスター・ペアレント)になる可能性大なので、キャンセル待ちが何番目だろうと、たとえ空きが出ても電話はしません。ですが、私も人間なので、「病気の兄弟がいて、病院に連れていけないので……」的な話に弱く、緊急性がある場合はなんとしても入園できるよう、人材を増やすなりして力になりたいと思っています(過去に経験あり)。「お兄ちゃんが受験で……」的な話だと、他園を紹介したり、大手シッター会社を勧めたりします。同業者とのつながりはありませんが、お教室の場所を聞けば、その周辺でまともな一時預かり保育園ぐらいはお母様が頼り知っていますので、なるべく見学が無駄足にならないよう努めています。
■ゴリ押ししたらどうなるか考えたことはありますか?
ゴリ押しママに問いたいことは、「あなたのお子様を無理に入れることによって、あなたのお子様を含む園児たちが過ごす保育室が狭くなりますし、きめ細やかな保育知育教育が受けられなくなります。それでもいいのですか?」ということ。園児の様子を見ながら、認可保育所よりも厳しい“角川基準”で考えて独自の定員を決めているので、詰め込んだら普通の保育園になってしまいます。今だって違う靴下を持って帰る(着替えをあえて子ども任せにしているので、子ども自身が鞄を間違えたり、ロッカーを間違えたりする)といった、ちょっとしたミスがまったくないわけではありません。「自分さえよければ」と無理にねじ込んでも、それはほかの園児にも自分の子どもにもよくないのです。
入園の際に、子どもについていろいろと聞いてはいますが、やっぱり実際に預かってみないとわからないことも多いので、新年度がスタートして子どもの性格や様子がわかり、「もっと園児を入園させても大丈夫だ」と判断した時のみ、キャンセル待ちの人に連絡をしています。認可外保育園はほかにもたくさんあり、定員割れしているところも少なくありません。東京都市大付属小学校の評議員が顧問だとか、ニコラス・ぺタスプロデュースの空手が習えるアクティビティがあるとか、理由はさまざまだと思いますが、「駒沢の森こども園」を選んだ理由をもう一度考えてもらえればと思います。私は在園児と、その保護者に満足してもらえるサービスを提供したいのです。
この時期を過ぎると、「来年空いてますか?」という問い合わせに変わります。「いっぱいです」という言葉と同時に電話が切れるので、通話時間が10秒もかからない電話が多くなります。ゴリ押しではなく、すぐに入園ができないと知っていても、問い合わせをしてくれる保護者の方たちには感謝しています。実際、入園できる日まで他園で待っていてくれる方もいます。保育園を設立する時「そのうち潰れるよ」と思っていた人々がたくさんいたでしょうけど、強い信念を持って、まじめに保育園をやってきてよかったと思いますね。
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では6歳の愛娘の子育てに奮闘中。