窓を開けて“風ごっこ”、旅先の空気をストロー吸引! 「nina’s」のおしゃれバイアスが狂気の沙汰
「夏のおうち遊びみんなの24じかん」と「夏の外遊びみんなの24じかん」がそれぞれ時間軸とともに紹介されています。おうち遊びの主役はママ。「一日かけて大きな紙にドローイング」では筆だけでなく全身を使ってアート遊び。自由にのびのびと子どもの感性を解放させます。お昼寝時間は寝相アート、自家製フレーバーウォーターで一服、夜は窓を開けて夜風を楽しむ“風ごっこ”……。一方外遊びはパパの世界で、「早朝の静かな海辺で子連れパパ会」をした後は、「朝の海で無限のキャンパスに砂浜アート」、さらに「地図を作って近所を探検」して、夕方には「自然の中にある友人の家で縁日を開催」してしまうのです。
凡人から見たら単に砂浜を棒切れで引っ掻いただけ、寝相悪いだけ、近所散歩してるだけ、暑いから窓開けただけですが、そこにフレームをつけたら、ほらもう“アート”。アートと言ったらアート、アートと言ったもん勝ちの世界です。「nina’s」で崇められるのは、自然に少し手を加えてできあがるような“お金で買えない価値”。そしてそれをアートと信じる、激しい思い込み……いやセンスなのです。
■「あえて」「あえて」で本末転倒
さて、夏休みの思い出作りと称して親たちのアートなエゴイズムを爆発させたところで、続いて紹介したいのは「私たちの思い出の残し方」。写真を撮る、動画を撮るくらいしか思い浮かばない凡人には刺激が強すぎる、かなり独創的なプランが並んでいます。
「気持ちを思い出しながら絵に残す」「記念撮影はポーズで盛り上がる」はかろうじて理解できるものの、「子どものアツ~イ言葉を刻む語録メモ」「家族の足型を押してオンリーワンの作品に」あたりから雲行きは怪しくなってきます。「自作の子ども服にときめく」「スノードームの中に広がる思い出ワールド」「心に残った景色を版画にして、アートに変換」などかなり高度なテクを要しそうなものの一方で、お手軽ながらある意味最もハードルが高そうなのが「空気と記憶を一緒にお持ち帰り」。旅先の空気を密閉袋に入れて持ち帰るそうで、「甲子園の土みたいな感覚で場所の記憶を空気と一緒に封じ込め、帰宅後はストローで少しずつ吸って味わいます」(アーティスト・39歳)とのこと。目をつぶり至福の表情で袋にストローをさしてスーハ―するアーティストお父さん……ASKA報道など時期が時期だけにビミョーですよ!!
「nina’s」流思い出の残し方は、さらに「おしゃれな人の写真の撮り方、残し方。」へと続きます。「撮り方編」では「手軽に撮りたいスマホ派」と「ちょっとこだわりたいコンパクト一眼派」のタイプ別に、おしゃれ達人たちの極意を紹介。子どもの写真というとつい表情のアップばかりを狙いがちですが、さすがおしゃれママたちは一味違います。「あえて引きで撮って空間をいかした写真に」「あえてシャッターチャンスは狙わず自然な表情を撮影」「あえて表情を見せないところがポイント」と“あえて”が乱れ飛びます。
フィルターをかけ、逆光で後ろ姿の子どもを撮るとほとんどなにを撮っているかよくわからないと思うのですが、チッチッチ(古)これがオシャレ。ただの落書きにフレームをつければアートとなるように、その実よくわからないものもニナmamaのご神託さえあればオシャレになります。ニナmamaというイタコの存在によって、オシャレの概念はより現実的なものになるのでしょう。
(西澤千央)