「いい妻・母・嫁」願望を叫び飛ばせ、と真面目に語る「婦人公論」
心理カウンセラーの石原加受子氏によると、人間関係に疲れてしまう人には「他者の顔色をうかがうあまり、自分自身の気持ちがなおざりになっている」という特徴があるそう。たとえば「今日は疲れているから手を抜きたいけれど、夫が不機嫌になるから、晩御飯を作らないと……」という場合、「自分の心地よさ(=休みたい)よりも、夫の心地よさ(=手料理を食べたい)を優先させている」のだと。「このように他者の基準でしか動けないことを、『他者中心』と表現している」とのことです。
それを踏まえて、この企画のキモはここから。他者中心思考に陥っている人は自分の気持ちに対し「センサーが鈍ってしまっている」状態なのだそう。そんな人はまず「ウォーミングアップとして自分の欲求を満たし、自分への愛を確認することから始めましょう」。ステップ1は「自分を愛するレッスン」。毎日の生活のなかで心地よさを感じたら、必ず「『気持ちいい~』『あ~幸せ!』と声に出してください」。それができたら、次は「欲求を感じる」こと。「「疲れたからお布団に入って眠りたい」など、体が求めるサインを察知し、それを満たす」のです。欲求を感じ、実行することに「罪悪感を持たないこと」がポイント。それで本当に満足できたら「ああ、自分を愛せてよかったわ!」と、また気持ちを言葉に表します。
自分への愛を絶叫したら、いよいよ「自分中心」レッスンです。手法は自分ラブとほぼ同じ。「自分は他者との関係で何がつらいのか」を感じ、「自分はどうしたいのか?」を知る。何を優先したいのかに気づいたら「私には○○する自由がある!」と叫ぶそう!! これはまさに主婦ミュージカル……。「ケーキを食べたわあ~、幸せ! 私は疲れているから甘いものが食べたいの~! 私は私をビッグラブ~」「子育てばかりで自分の時間がないじゃない! 私もしたいわショッピングゥゥ~! あぁ取り戻せフリーダム! 私にはショッピングに出かける自由が~あ~る~」……これは、「♪トゥモロートゥモロー」を凌ぐ名作の予感。
「私には出かけたいから出かける自由がある」その自信は顔や態度に表れ、周りを巻き込んでいくとのことです。巷で流行りの「レリゴー」(『アナと雪の女王』)を「婦人公論」風にアレンジすると、こうなるのではないでしょうか。自分を好きになって~私はショッピングゥゥ。しかし買い物一つに自由意思を見出せない「女の役割」って、一体なんなのでしょうね。「子守唄で日本の伝統的育児を推進!」せずとも、「良き○○」願望はそう簡単に女を解放してくれはしないのです。
(西澤千央)