カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「CLASSY.」6月号

こなれ狂いの「CLASSY.」が、一番モテる服=自己主張のない服と必死の喧伝

2014/05/12 21:00

 そんなわけで「こなれの空気」を懇切丁寧に解説。たとえば「シャツにカーデの肩かけ」なら、クルーネックではなくVネックを、「デニムのロールアップ」なら「きちんと平等」よりも「自然に無造作」を心がける、などなど。この辺りはまぁ想定内ですが、さらにこなれワザは詳細に。肩かけカーデから垂らした袖は「べたっとしていると格好悪い。広げて中にエアリー感を含ませてあげると◎」、シャツを腰に巻く時は「垂らした袖は股にかからないようにずらして」。たるませ具合が難しいシャツのイン、スカートの場合は「ひとまずスカートにビシっと入れてその後思いっきり手を伸ばしてバンザイ!」……。

 これを見て全国の「CLASSY.」女子が全力のバンザイをしたり、垂らした袖にパタパタしながら空気を入れたりするのでしょうか……。「CLASSY.」のこなれ指南は、ついに「小悪魔ageha」(インフォレスト)のメイク企画にも通じる“具体性の鬼”と化しました。まさに「こなれ」の錬金術師。これはもう一つのショーとして楽しむべきですね。

■ベストこなれコーデ=迷彩柄という真実

 「こなれ」が「自然な無造作」という本来の意味を思いっきり失っている中、足元をもう一度踏み固めるような企画がありましたので、ご紹介します。「真実のモテ服はモテ賢者が知っている」。そうです、「CLASSY.」読者はこなれたいんじゃない、モテたいんです!

 ファッションディレクターの干場義雅氏、エッセイストの潮凪洋介氏、ファッションエキスパートの植松晃士氏、恋愛カウンセラーのぐっどうぃる博士がそれぞれの専門分野から男心を考察し、本当に「モテる服」をアドバイスする企画。扉ページには「過ぎたるは及ばざるが如し」(干場氏)、「出会いの瞬間が本命か遊びかの分かれ道」(潮凪氏)、「一緒にいて落ち着く自己主張のない服を」(ぐっどうぃる博士)、「レースは幸せを導く鍵」(植松氏)など“モテ賢者”たちのありがた~い格言が並んでいます。

 彼らの言う「モテる」服を総合すると、男子校か共学かなど男性の育った環境を考慮して自己主張はせず(ぐっどうぃる博士)、最初トラッド、二回目カジュアル、付き合う直前は大胆露出で本命路線(潮凪氏)、トレンドをほどよく取り入れることで女性の敵をつくらず男性の好みを纏い(植松氏)、相手に合わせてその風景に溶け込むような(干場氏)ファッションということのよう。もういっそのこと迷彩服でいいのでは……。

 そこにグッドなウィルはあるのか毎回疑問しかない、ぐっどうぃる博士が畳み掛ける「自己主張のない服」とは一体どんなものなのでしょうか。「男性が好むのは『見慣れたもので自己主張のない服を』着ている女性」「男性は『身も心も健康で恋に興味のある女性=ごく普通の女の子』を本能的に好みます」「男性の育った環境を把握しつつ、わかりやすく、自己主張しない服を選ぶことが男性にウケるポイントだと思います」。「身も心も健康で」「ごく普通の女の子」は、「自己主張のない服」を着ているはず……高級ブランドや尖ったデザインで男性を威圧しない、ファッションで自分を表現したいとか考えない、自分が理解できないことに不寛容な男性を安心させるスタイルこそ、「こなれカジュアル」なのです。

 「CLASSY.」が読者にゼロからこなれカジュアルを叩き込むのも、これが今一番「モテる服・結婚できる服」と見込まれているからでしょう。女に「物言わぬ女房」を望む男性諸氏には、妻に飯を食わすのもイヤなどケチ男の悲劇、民話「飯食わぬ嫁」の教訓をお贈りしたいと思います!
(西澤千央)

最終更新:2014/06/05 14:08
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