80年代、女子プロレス、アイドル、J-POP……熱狂とブーム再生に心を震わす
【単行本】
『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』(香月孝史、青弓社)
『「アイドル」の読み方』(香月孝史、青弓社)
「アイドルらしからぬ」というフレーズが、人気アイドルを称賛する常套句になっている今、「アイドル」という言葉が本当は何を指しているのか分析し、なるべく公平に女性アイドル界の現在を見渡し、論じるための交通整理を試みているのが『「アイドル」の読み方』だ。
ここで取り上げられる「アイドル」とは、AKB48やももいろクローバーZ、BiS、でんぱ組inc.など、女性グループが中心だが、アイドルやそのファンをわかりやすく分類したり断じたりはしない。むしろ、「アイドル」「アイドルオタ」としてひとくくりに語られることに抵抗し、「今のアイドルって、モテない男(女)の理想の異性を演じてお金をもらう職業でしょ?」というような大雑把なイメージに当てはめる人々と、生真面目に戦っているようにも見える。
かつて確かに存在した女子プロレスブームが、現在適切に認知されているとは言えないように、熱狂的に祭り上げられたアイドルを、のちに正確に再評価するのは難しい。だからこそ、ブームの熱が冷めきっていない今のうちに「アイドルと熱狂」を語ることに正面から取り組んだ、「アイドル愛」に満ちた文化評論だ。
【マンガ】
『独身OLのすべて(1)』(まずりん、講談社)
『独身OLのすべて(1)』(まずりん、講談社)
講談社のWEBコミックサイト「モアイ」で人気連載中の、アラサー独身OL3人組の日常をブラックユーモアたっぷりに描いた作品が単行本化。
ほとんど人の形をしていないベテランOLたちが、新人OLの計算ずくの可愛さに嫌味で対抗し、イケメン社員のリア充ぶりに毒づき、仲間内で傷を舐め合いつつも、隙あらば互いに上位に立とうとする。そこに自虐が入っていても後味良く笑えるのは、「OL/アラサー独身/非モテ」でおおよそイメージされる女性たちの本音を代弁しながら、その枠に安易にハメてくる周りの人ごと笑い飛ばしているから。周囲の無理解に傷つきつつ、自分も誰かを同じように傷つける加害者であることを、笑いににまぶしながら気付かせてくれる。
随所に挟まれるジョジョ&三国志ネタに加えて、B’zにTRF、ジャニーズ……と90年代J‐POPが強制的にBGMとして流れてくる絶妙なセリフにも注目してほしい。
(保田夏子)