ナンのような巨顔から卒業!! 韓国のコルギ体験で悟った、「女の小顔願望」の底なし沼
美しくなりたい――世の女たちの狂おしい思いを、「43歳、ゲイ、汚部屋に一人暮らし」の漫画家・大久保ニューが担ぎ込む! 古今東西あらゆる美容法に食らいつき、美を追い求める女の情念まで引きずり出す――
私はムダに背が高い。183センチもある。思春期から「背伸びしてのキス」にあこがれていたので、160センチになったあたりから「もう伸びないで!!」と祈っていたのだが、祈りも虚しくズンズンと伸びてしまった。もう「震えるつま先でのキス」は、夢のまた夢である。そんな私がここ10年ほど、電車に乗るたびに驚くのは「背の高い男子が増えたなー!」ってことと、「背が高いのに、どうしてそんなに小顔なの!?」ってことである。私の青春時代は「背が高いと、もれなく顔もデカい」ものだったのに……。
というワケで、もちろん私も顔がデカい。特に頭周り。帽子なんて絶対に入らない60センチオーバーだ。深酒でむくんだ日などは、顔面が特大のナンみたいに思える。でもこれはもう、骨を削るしかない話なので、半ばあきらめていたのだが、「コルギ(骨気)で顔を小さくしませんか?」と、担当編集のJ子が誘ってきた。「コルギ」と言えば、骨の奥のツボを刺激してむくみを取るという韓国の美容マッサージ。うわさには聞いていたが「かなり痛いんでしょ?」と躊躇する私に、「前田敦子のエラはコルギでキレイになったらしいんです☆」とJ子。本当に!? その提案、乗ったよ☆
J子を引きずるようにやってきたのは、都内某所のマッサージ院。J子とお揃いのTシャツに着替えて、隣り合わせのベッドに横になる。スタッフさんは全員が韓国人で、アジアンな内装も相まってか「なんだか海外旅行に来た気分ですねー」とJ子。確かに旅行会社のCMのワンカットのような図だ。J子の担当となるのは弘田三枝子的な面持ち(ガッツリやってるね☆感のある)淑女、っつーか陽気なオバはん。私にはタレ目が可愛いイケメンが担当となった。イケメンはほかのスタッフと韓国語で話す時は低い声なのに、日本語だとたどたどしいところが「私に対して一生懸命」って気がしてグッときちゃうね☆
まずは、蒸しタオルにて洗顔代わりなのかゴシゴシと顔面を拭かれる。そしてピーリングをして、またもゴシゴシ。「あの……私が日頃どれだけ『やさしい洗顔』に気を遣っているか知ってる!?」との声を飲み込む。私の倍以上の叫びをJ子も飲み込んでいたらしい。そして、クリームを顔面に塗布されて、いよいよコルギの始まりである。施術直前、「気になるところはありマスカ?」とイケメンが尋ねてきた。何て言おうか悩んでいると、隣りのオバはんが「全部よネー?」と言ってくれたので、「全部でお願いします☆」と笑って答えた。それが最後の笑顔になるとも知らず……。
痛い。すごく痛い!! アゴから始まった施術は、まるで私のデカい顔面が気に喰わないかのごとく、恨みがこもったかのような圧でグリグリッと指圧してくる。「お前のアゴ、割ったら少しは小さくなんじゃね?」とか思っているんじゃないかと思うくらいの圧。「痛みを感じるのは老廃物が溜まっているから」と知っているが、こんなに溜まっていたんかい!? っつーか、骨が折れる前の痛みじゃないの!? 開始直後に私の目は涙が溜まっていた。
口周り&頬骨周辺を「折れちまえ!」的な圧で押されまくる。途中、私を見たらしいJ子が「なんで気持ち良さそうな顔してるんですか?」と質問してきた。それはね「口角を、上げてないと、苦悶の、表情が、刻み込まれそうだからっ!」と、途切れ途切れに答える。私は、せっかくのイケメンが施術してくれているのに、指が滑って目に入ったら怖いから、目をつぶったままだったが、途中、J子とオバはん2人の「あっ!!」という叫びが聞こえた。口周りの施術の途中、オバはんの指がJ子の口に入ったらしい。「キレイにするために一生懸命にやったからヨ☆」とはオバはんの弁。このやり取りも海外旅行と思えば許せる不思議。