芸能
まる見え!イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

『死神くん』――キャラクタードラマで際立つ嵐・大野智の“人生に期待していない”強さ

2014/04/26 15:00

■“人生に期待しない”強さ
 近年のテレビドラマでは漫画原作のものや漫画のエッセンスをテレビドラマに持ち込んだキャラクタードラマが全盛だ。そんな中で、年相応の青年ではなく、漫画やアニメの登場人物のようなキャラクターを演じる時に、大野のポテンシャルが強く発揮される。しかしそれは心身ともに記号的なキャラクターになりきるからではなく、コスプレしているがゆえに、アラサー男子としての大野の体が際立つからだ。出世作となった『怪物くん』(日本テレビ系)にしても『死神くん』にしても、漫画の絵柄の印象に寄せるならば、小学生の子役が演じた方が違和感はなかったかもしれない。しかし、それでは外見は似せることができても、作品の根底にある不気味な味わいまでは取り込めなかっただろう。

 だが一方で、大野の演技はどんなに激高するような激しい芝居をしても、必要以上に役に入り込むのではなく、常に距離をとっているかのような淡々とした佇まいが存在する。おそらく、テレビドラマにおける大野の方向性を決定づけたのは、連ドラ初主演となった『魔王』(TBS系)ではなく、『歌のお兄さん』(テレビ朝日系)の矢野健太だろう。子ども番組の出演者として、派手な格好をさせられて嫌々仕事をしている“やらされてる感”は、アイドルとしての大野(あるいは嵐)のスタンスにうまくマッチしていた。

 この、“やらされてる感”は重要なキーワードで、おそらく嵐のアイドルとしての強さの半分は、これで説明がつくのではないかと思う。何というか、運命に理由はないと全てを受け入れ、自分の仕事を黙々とこなしているというか、人生や世の中に対して何も期待していない人間だけが持つ強さが大野智にはある。そんな、淡々と状況を受け入れる姿は、3月に最終回を迎えた『笑っていいとも!』(フジテレビ系)におけるタモリの振る舞いにも通じるかもしれない。

 最後にやや余談となるが、大野のドラマは制作発表がされると、毎回、何でこれを実写ドラマ化? という失笑が漂う。『歌のおにいさん』にしても『怪物くん』にしても、普通の役者なら躊躇してしまうような安っぽい題材で、出演すること自体が罰ゲームのようだと最初は思った。しかし、そんな無茶振りに対し、大野はポーカーフェイスで淡々とこなし、役を自分のものにすることで作品のクオリティを高め、危険な賭けに全て打ち勝ってきた。否、本人にとっては賭けをしているという意識すらなかったのかもしれない。もはや、『死神くん』で死神を演じるといっても、誰も罰ゲームとは思わないだろう。そこには、大野智なら大丈夫という安定感しか存在しない。これなら、同じえんどコイチの『ついでにとんちんかん』(集英社)の間抜作だって、演じられるかもしれない。
(成馬零一)

最終更新:2014/04/26 15:00
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