『死神くん』――キャラクタードラマで際立つ嵐・大野智の“人生に期待していない”強さ
仮面ライダー俳優から個性派へ、アイドル俳優から実力派へ――ドラマでの若手俳優の起用法は、ここ10年で大きく変化した。ジャニーズとイケメン俳優の現在の立ち位置と魅力を、話題の起用作から読み解いていく。
「無駄に長生きして、余計な苦労を背負わずにすむんですよ。人間にとって、こんなおめでたいことはないはずですよねぇ」
黒いスーツを着た小柄の男がぷかぷかと宙に浮かびながら、飄々とした声で少女に語りかける。まだ死にたくないという少女に対し、男はこう切り返す。
「人間はみな、いずれは死ぬんです。たまたまそれが早くなるだけのことです」
『死神くん』(テレビ朝日系)は、80年代に発表されたえんどコイチの漫画をドラマ化したものだ。物語は1話完結モノで、毎回、余命わずかの人間の元に死神が現れて、話かけるところからはじまる。カワイイ絵柄とギャップのあるえげつないストーリーが、当時の読者に軽いトラウマを残した知る人ぞ知る傑作だったのだが、まさかこの21世紀に、嵐の大野智・主演でドラマ化されるとは夢にも思わなかった。
第1話は、容姿にコンプレックスのある女子高生・大西福子(大原櫻子)が主人公の物語だ。福子には美少女の親友・小林真美(高田里穂)がいるが、火災事故で顔に大きな火傷を負って失明し、今は入院している。真美のために何かをしてあげたいと思う福子だったが、死神(大野智)によって、余命が3日だと告げられたことで、自分の本当の気持ちと向き合うことになっていく。
演出は映画『リング』『クロユリ団地』の監督を務めた中田秀夫。ティーンエイジャーにとっては生々しい美醜というモチーフや、包帯の隙間から見える真実の火傷の痕など、エグい描写も多く、ヒューマンテイストのドラマの中に所々えげつない描写が忍ばせてある。それは大野智が演じる死神が、ポーカーフェイスで繰り出す台詞も同様だ。自分が死ぬということにショックを受ける福子に対し、死神は実に淡々としており、どこか死を救済と捉えている節すらある。だから福子の容姿や人間関係についての悩みに対しても、「理解できませんねえ」と他人事で、喜怒哀楽という感情自体が理解できないかのようだ。
そんな死神が、何故、死の間際にある人間に対して積極的に関わり、生きた証しを残してあげようとするのか。そんな無機質な死生観とヒューマニズムの間で揺れる振り幅自体が、本作の魅力だと言える。