かつては売れっ子、低迷するアラフォー女漫画家の自虐コメディ『都の昼寝物語』の叫び
太洋社の「コミック発売予定一覧」によりますと、たとえば2014年3月には1085点ものマンガが刊行されています。1日あたり平均35冊、1時間あたり平均約1.46冊が発売されている計算です。その中から一般読者が「なんかおもしろいマンガ」を探し当てるのは至難のワザ。この記事があなたの「なんかおもしろいマンガ」探しの一助になれば幸いであります。
【話題】手塚治虫文化賞『3月のライオン』、マンガ大賞『乙嫁語り』
年度末の総決算は「手塚治虫文化賞」と「マンガ大賞」であります。年末の各誌のランキングがその1年間に一番おもしろかったマンガを決めようとするものであるのに対し、この2つの賞はもう少し長いスパンで、腰を落ち着けて作品を評価しようとする賞です。前者は専門家や実作者などからなる審査員によって、後者は書店員をはじめとした有志の投票によって決められています。
結果は「手塚治虫文化賞」が羽海野チカ先生の『3月のライオン』(白泉社)、「マンガ大賞」が森薫先生の『乙嫁語り』(KADOKAWA)に決定いたしました。ともにすでに高い評価を得ており、セールス的にも一定の成功を収めていますが、未読の方には今すぐにでも大人買いすることをオススメしたいくらいの素晴らしい作品たちですので、このセレクトには多くのマンガファンが納得したのではないかと想像します。
納得といえば、「マンガ大賞」における『坂本ですが?』(KADOKAWA)のポジションにも激しく納得いたしました。ブービーにも圧倒的な大差をつけられての最下位。これまでは不思議と方方で過大評価されてきたようですけど、やっとその実際のクオリティにふさわしい正当な評価を受けたということでしょう。ギャグマンガのジャッジは往々にして印象批評的になりがちですが、しかし百歩譲ってこのマンガを「おもしろい」と言うのならば、例えば同じビームコミックス系の長崎ライチ先生『ふうらい姉妹』や室井大資先生『秋津』(ともにKADOKAWA)は宇宙レベルで絶賛すべきおもしろさですし、ほかにも「マンガ大賞」の候補に挙げるべきギャグマンガはたくさんあるはずです。「売りやすさ」を優先して設定の珍妙さに笑いの多くを依存した「出オチ」系ギャグマンガには、今後も個人として厳しい態度で臨んでいきたいと思います。
なお「マンガ大賞」の公式サイトではすべてのノミネート作品に対する選考員のおすすめコメントを読むことができます。最終選考にまで残らなかった作品の中にも、もちろんおもしろいマンガはたくさんありました。気の合う選考員がいましたら、ぜひその人がおすすめするマンガを手に取ってみてください。ちなみにこの中ですと私のおすすめは池辺葵先生『どぶがわ』(秋田書店)、森本梢子先生『高台家の人々』(集英社)、市川春子先生『宝石の国』(講談社)あたりになります。興味があればぜひ。