コラム
山中登志子の【脱“外見&恋愛”オンチ】

大統領を射止めたデヴィ夫人のように……「エアSTAP細胞」騒動に思うエアと現実の違い

2014/04/19 18:30
撮影:吉田尚弘

――美人でない人=外見オンチが、「美の格差社会」の中で生き抜くためには、どうすればいいのか? 交際相手から「1000万円出すから」と整形をすすめられた女の連載テーマは、そこいらのエッセイストには書けない建前抜きの“美醜”と“恋愛”。今回のテーマは「恋愛オンチ」。

 先週は「小保方晴子」報道一色だった。小保方さんは1月、ふりふりのフレアスカート、くりんくりんの巻き髪&明るめのカラーリングの髪、つけまつ毛のアイメイクでさっそうと登場した。それが、今回はご本人いわく体調は「絶不調」。2カ月の騒動で顔も憔悴しきっていた彼女。

 今回の記者会見でわたしが最初にチェックしたのはつけまつ毛。つけまつ毛がないから、目元の印象がかなり違っていた。髪の色もちょっとダークな色になっていた。割烹着にしても、研究以外の部分でも「見られる」ことを意識している女性だと思った。だから、マスコミが追っかけたくなるとも言えるのだが……。研究畑の中で男たちはきっと落ちるだろうな! やはり、見た目もあっての「STAP細胞」事件である。名前までそうだ。「小保方晴子」ですよ。「佐村河内」にも驚いたけど、「小保方」も初めて聞く名前でかなり新鮮。

 デヴィ夫人が先月「小保方さん、頑張ってください! 日本の男の醜いジェラシーに負けないで!」「成功者へのジェラシーはつきものです。ましてや貴女は若くて美しい」とTwitterで擁護していた。デヴィ夫人が言うように、外見があるからこその事件で、だからかなりヒートアップしているとわたしも感じている。「エアSTAP細胞」とまで週刊誌で書かれてしまったが、STAP細胞だけは「エア」であってほしくないのだけどな……。「あります!」「200回成功した」という「リアルSTAP細胞」の証拠を出したら納得するのに、そうでないから余計に本来ならどうでもいいことまで注目させてくれる。

 恋愛においても「エア恋愛」と「リアル恋愛」というのがある。生活の中で「刺激がほしい」という思いから、パートナー以外との恋愛を妄想するのが「エア恋愛」(妄想恋愛)。「エア恋愛」を特集したことがあるNHK『あさイチ』でのアンケートでも、約7割の主婦が「エア恋愛」経験ありだった。相手は宅急便のお兄さん、芸能人などなど。自分が主人公で、絶対に付き合うことがないような相手との恋、初恋の彼との恋……妄想は人それぞれ。女性ホルモンも出てくるから、「エア恋愛」効果で心も体もリフレッシュできるようだ。

■デヴィ夫人ほどの覚悟は……

 わたしは、占い館のオーナーもやっているのだが、相談に来る女性の悩みはなんといっても恋愛。「出会いがない」という女性もいれば、秘密の恋愛に悩む女性も多い。「エア恋愛」の相談は対面鑑定ではほぼないのだが、「王子さまと結婚したい!」という妙齢の女性がやって来たことがあった。真剣に「白人貴族に嫁ぎたい」と言っていて、でも、彼女がしゃべれるのは日本語のみ。外見や年齢はともかく「リアル恋愛」は超現実なのだから、嫁ぐ相手の国の言葉がしゃべれないなんてダメだよな……と思ってしまった。

 小保方さん擁護派のデヴィ夫人はそのあたりが違う。通常なら「エア恋愛」で終わるレベルの世界で、「リアル恋愛」をゲットした特例中の特例だ。それもインドネシア大統領! 家族思いのデヴィ夫人は“日本国”を背負って、インドネシアに嫁いだ。もともとおキレイなのに、高級クラブ「コパカバーナ」時代、歯を全部抜いたとか。見初められる女性は一握りとはいえ、そのために悪くない歯を抜くなんて「ああ、痛そう」と思った時点で無理、無理。

 TBS系のバラエティ番組『奥様はモンスター』でのビンタ事件。参加していた一般女性の「わたしもデヴィさんみたいに玉の輿に乗りたいですよ」という言葉に、「わたしは玉の輿ではありませんから」とデヴィ夫人は返した。「でも、『デヴィ夫人』としてお仕事されていますよね」「わたしは自分の力で仕事をしている」「でも、デヴィ夫人という名前でテレビに出ている」とバトルへ展開。多かれ少なかれ「リアル恋愛」は痛みを伴うこともある。そして「エア恋愛」を「リアル恋愛」に変えるには努力がいる。デヴィ夫人の人生を思う時、「玉の輿」はきっと言われたくない言葉だったんだろう。

 「外見オンチ」組で、「リアル恋愛」から遠ざかっている「恋愛オンチ」女性には「エア恋愛」だ。かくいうわたしの今の「エア恋愛」のお相手は、映画『進撃の巨人』の主演にも選ばれ、ノリノリの三浦春馬。1990年生まれだなんて、ついこの間じゃない~~と思ってしまうお年頃のわたしもなんのその。人の頭の中のことなんて、誰にもわかりっこないのだから妄想しても関係なし!

 今回、小保方さんが「エア」か「リアル」か? で苦闘しているのを見て、
*「エア」の範囲なら、人に知られなければ問題にはならない。
*「リアル」に変えるには、努力が必要である(ハードルが高いほど努力が必要)。
と、当たり前の恋愛ステップをあらためて考えてしまった「小保方晴子事件」でもある。

 しばし「エア恋愛」を貫くのもよい。でも、やっぱり「エア」で終わるのは嫌だと思っているのなら、「エアSTAP細胞」が「リアルSTAP細胞」になるために確証が必要なように、「リアル恋愛」に進むためには自分の恋愛傾向を知ることだ。わたしも恋愛傾向がくっきり見えてきた。「エア恋愛」は超おすすめ派だが、それはそれで落とし穴もある。それはまた別の機会にでも。

山中登志子(やまなか・としこ)
基地の街・岩国&丙午生まれの編集家。趣味はCMチェック。200万部ベストセラー『買ってはいけない』の企画・編集・執筆者。現在は、提案型の共著『なっとく!シリーズ』を展開中。自著に『天然ブスと人工美人 どちらを選びますか? 』(光文社新書)など。“顔は、変わる。顔は、思ったようになる”「脳メイク」アドバイザーとして活動開始。占い&ヒーリングスペース「」(新宿御苑)プロデューサー。
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最終更新:2014/07/15 00:57
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