モラハラ夫からの逃走、不倫、再婚へ! 「VERY」妻が語る、セックスなしの修羅場愛
彼の前妻もまた、由実さんの前夫と同じく、重箱の隅をつつくように彼の家事に文句を付け、精神的に追い詰めて行った。由実さんと彼は、サイトで連絡先を交換し、直接会い、少しでも離婚に有利になるようなあらゆる情報を交換しあった。
「そうしているうちに、自然と……好意を寄せ合うようになりました」
しかし、お互いの離婚が成立する前は、「一度もセックスをしなかった」と、由実さんは言う。
「キスはしましたけどね。初めてキスをしたのは私が家を出て1人暮らしを始めた日でした。その時私は31歳でしたから、彼と出会ってから3年たっていました。私はすでに前夫とは離れていましたので、彼に抱かれたい気持ちでいっぱいでしたが、彼が頑に拒みました。『ちゃんとしてから、迎えに来るから』って」
彼とは、何度も何度もキスを交わしたそうだ。
「指を絡めあって、舌がとろけてしまうかもしれない。そんなキスでした。多分、興信所の方にその様子を撮られれば、裁判では確実に不利になっていたでしょうね。でも、私はそんなこと、もうどうでもよかったんです。彼の唇はいつも熱くて、体中がとろけそうで……こんなに熱く私を包んでくれる人がいるというだけで、気が遠くなりそうな裁判を何十年も戦えそうな気がしていました」
そして2人は、晴れて離婚が成立する。最初に成立したのが由実さん、その数カ月後、追いかけるように彼の離婚が成立した。そして由実さんと彼は、昨年の春に夫婦となった。
「当時の彼と私は、とにかく生きることに精一杯でした。『不倫』とか『婚外恋愛』とか、私たちの関係性をどう言おうということすら思わなかったです。自分では『不倫』なんて言葉を使いたくありませんし、かといって『婚外恋愛』という自己肯定するような言葉を使うのもちょっと。けど、当時の私がどんな背景があったとしても、人から見れば、不倫は不倫なんだろうなと思います。私が考えるに、当時の2人に名前をつけるとすれば……“同志”かな、と思います」
ようやく心から寄り添える、同志と出会えた由実さん。華やかなファッションを身にまとい、柔らかな笑顔を残して去って行った彼女を見ていると、「不倫」や「婚外恋愛」などという、濁りを帯びた単語では処理できないかもしれないなと思った。
(文・イラスト=いしいのりえ)