33歳OLと21歳大学生の年の差愛――『きょうは会社休みます。』が最高にイラつく理由
そもそも、年上の女がOKという男は、女性からの評価が高い。たいていの女は外見に自信がなく(あったらモデルだのアイドルだのになってるはずだ)、ゆえに女は「外見ではなく中身で自分を評価してほしい」「経験を重ねた自分こそを評価してくれる男がほしい」のである。
にもかかわらず、田之倉くんよりむしろ花笑の方が年齢にこだわり、「大学生なんてないない!」「12も年下なんだからないない!」と言い聞かせる。これ、たいていの女は同じことを思っているはずだ。でも、その「年下の男が“ない”理由」は、「若い男を追いかけ回す痛い女だと思われたくない」「婚期を逃したくない」「いいように利用されたくない」といったところだろう。
でもぶっちゃけ、相手が自分に誠実で、結婚とはいわなくても(未来のことは誰にもわからないから!)真面目に考えてくれて、金の心配がなくて、若い人間にありがちな短気なところがなかったら、そりゃあ若い男のがいいに決まってるじゃん!! 田之倉(もう敬称なんかつけるもんか)は、その全てを満たしたスーパーヒーローなのである。
ではなぜ冒頭で述べたように、そんなスーパーヒーローが世の中の女たちを激しく怒らせているのだろうか? これを読んでる社会人の女たちは、身もだえしながらこう思っているはずだ。
こ・ん・な・だ・い・が・く・せ・い・い・る・かっ!!!!
……いえね、この程度のスーパーヒーロー、ホントのところ、中高生向けの少女漫画にだったらいくらでもいるんですよ。誠実で気配りのきく『ストロボ・エッジ』(集英社)の一ノ瀬くんとかさ。恋に恋する年代の読者が読む少女漫画だったら、ひたすらヒーローにあこがれて、楽しく胸をときめかせる、いい作品だったかもしれない。
だけど、もはや人生の酸いも甘いも噛み分けた女たちにとって、田之倉は心の毒でしかないのだ。田之倉がなぜ心の毒かって、そりゃどこにもハズレがなくて、ど真ん中にビンビンくることばっかりやってくれるからだ。そんなの、大人の女性向けの少女漫画でやってどうする! いまさら、こんな夢を見て恋に恋したって、婚期を逃すだけじゃない! ダメだダメだ、こんな夢の玉手箱、読んだら目がつぶれるよ!
■メイ作判定
名作:メイ作=6:4
和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター、少女漫画研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。