「更年期症状が消えた」「癒やしより興奮」人間よりくまモンに熱狂するファン心理
こうした手厚い心と肉体的なスキンシップのせいか、ファンはくまモンに会った後、「今日はくまモンとゆっくりしゃべれた」と感じることがあるという(ご存じの通り、くまモンはふなっしーのようにしゃべることはないのだが)。そして、「実際にナマのくまモンに会うと、癒やされるより先に、興奮してしまう」「もっとくまモンに触れたい、もっとしゃべりたい、この人は何を考えているのだろう、という恋愛初期にも似た感情がわき起こる」というのだ。
しかし、くまモンの最大の武器は、“性的な存在ではない”ということだろう。著者はくまモンを「男の子でもあり、女の子でもあり、おにいさんでもおねえさんでもあり、おじさんでもおばさんでもある」と表しているが、性的な存在でない分、結婚発表や熱愛発覚、浮気といったスキャンダルに胸を痛めることもない。ただ、恋に似た興奮やときめきを与えてくれる熊の人……。恋愛や結婚生活のままならなさ、無情が骨身に染みている女性こそ、人智を越えたくまモンの存在に惹かれるのかもしれない。実際、著者がイベントで知り合った追っかけの50歳女性は、「韓流スターや実在の芸能人とも違う。まったく見返りを求めずに、ただ会いたいから会いにくる」と話す。見返りを求めない愛──まさに奇跡の純愛である。
さらに本書には、くまモンのファンになって更年期症状が消えたという女性まで登場。ふなっしーが独走しているように見えるゆるキャラ界だが、くまモンは地道にマーケットの開拓を続けているようだ。
ちなみに気になるのは、くまモンブームが一過性で終わらないかどうか。話題性という意味で手っ取り早いのは、ミッキーマウスにおけるミニーマウスや、キティちゃんにおける家族をつくってしまうことのようにも思えるが、著者は「くまモンの妹やら恋人やらを見る気はしない」とキッパリ。「企業として儲ける必要がないのだから、むしろ、ずっと孤高の人であってもらいたい」のだそう。着ぐるみだろうがアイドルだろうが、ファン心理とは難しいものである。