「ジャニーズなのに」トークを展開するA.B.C-Zに募る、「ジャニーズですから」を求める欲
「ジャニーズなのに」、「ジャニーズだけど」、「ジャニーズぽくない」、「ジャニーズらしからぬ」……。「ジャニーズだけど芸人顔負けのト-ク」とか、「ジャニーズなのにブサイク」。この「だけど・なのに」ウリ、面白いは面白いのだけれど、出るグループ出るグループこのノリだと、さすがにおなかいっぱいだ。
3月17日放送の情報番組『PON!』(日本テレビ系)にゲスト出演した、A.B.C-Z。番組情報欄に、こうあった。<ジャニーズの雑草魂グループA.B.C-Z 生で語る“こんなところから這い上がった! 秘話”>――“雑草魂”とは、ド真ん中できたな。A.B.C-Zメンバ-も、「だけど・なのに」がウリになっているだけに、
「キスマイとかがやらない仕事を僕たちがやる」(河合郁人)
「歌番組より、本当にバラエティの仕事のほうが(多い)」(橋本良亮)
と、自虐ぎみに語る。Kis-My-Ft2も、たいがいバラエティで身体張ってたりするし、そもそも「舞祭組」とイジられたりするのだが……。A.B.C-Zからしたらキスマイは、「ジャニ-ズらしい」ポジションなのかと、ヘンなところに感心してしまった。番組MCのビビる大木は、そんな自虐ネタをかますA.B.C-Zメンバ-を、「開拓ですよ」と、上手にフォロー。
トーク本編も、テーマはもちろん「だけど・なのに」。<僕たちジャニ-ズなのに○○なんです! A.B.C-Zの残念すぎる話>ということで、メンバ-それぞれが「なのに」エピソードを披露していく。橋本は、「ジャニーズなのに、とてもアホなんです! ステロイドをデストロイと言い間違えたりとか、九九を全部言えないとか」とのことで、その場で九九の七の段を言わされる。「なないちが、いち」としょっぱなで、アウト。気を取り直して、やり直しすると、「ななに、じゅうし」「ななさん、にじゅういち」……ていうか、そもそも「ななさん」とかいう言い方、聞いたことないなと思っていたら、途中で橋本本人も、「『ななご』って言ってる時点でアホですよね」と自覚。
そのほかのメンバーの「ジャニーズなのに」ネタも、順に紹介していく。体力測定の結果から「ジャニーズなのに60代なんです」と言う河合。変装もせず渋谷を歩いても誰にも声をかけられず、「ジャニーズなのにオーラがないんです」と言う五関晃一。渋谷や原宿、六本木などで「疎外感」を感じ、「ジャニーズなのに、毎日ひとりぼっちなんです」と言う戸塚祥太。そして、「ジャニーズなのに、顔がクリス松村さんに似ているんです」と、塚田僚一で落とした。
「僕も年を重ねて、クリス松村さんの年齢になると、こういう顔になるのかなと思って、夜も眠れません」
と言って笑いをとっていたが、これを見たらクリスがちょっと傷ついちゃいそうだ。そして、なによりこの日の締めのトークで河合が発した、「違うことやってかないと、本当に(ジャニーズを)やってけないんですよね」という言葉が、切実なトーンに聞こえた。大木もそう察したのか、「どうしたんだ? そんなに」と、ちょっと驚いた感じになっていた。頑張れ、A.B.C-Z。
確かに、テレビを見ている分には自虐ネタは笑えるし、親しみも感じやすいから、1つの正解なのかもしれない。ジャニ-ズも、お茶の間で人気が出てこそな部分もあるし、最近ではなかなかドラマでのブレイクも難しい。だから、ト-ク番組はお茶の間に爪痕を残すいい機会ではある。結果、そういった「だけどジャニーズ」ウリが一番効果的ともいえるだろう。
でも、茶の間の需要からはちょっとズレてるけど、ひたすらキラキラでひたすらにオ-ラを放つ、若い女の子には圧倒的な人気のアイドル。そんな、「だけど・なのに」ではなく、「ジャニーズですから」というのも、ちょっと見たい。
(太田サトル)