カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」3月22日号

「婦人公論」で江原啓之がズレた毒母論を展開!

2014/03/19 21:00

 ルポ「ストレスの源泉は、親ではなくきょうだいだった」には、親子問題をいっそうややこしくする「介護には非協力的、親の現状を理解しない、低収入で生活苦……」なきょうだいたちが多数報告されています。「子どもは私しかいないのですから、仕方がありません」という姫野氏とは対照的に、きょうだいがいるからこそ生じる介護のダチョウ倶楽部的な譲り合い、また親だけでなくきょうだいも老い、キレて暴言を吐くなどトラブルがミルフィーユ状態です。しかし、子どもを平等に愛していると思っていた親からあからさまな「ダメな子ほどカワイイ」を見せつけられてゲンナリした時、その時こそが「親をあきらめる」スイッチなのかもしれません。

■江原啓之が語るちょいズレ毒母問題

 姫野氏はインタビューをこう締めくくっています。「親子であっても、『そもそも話が通じなくて当たり前』と思うところからはじめると、少しは気が楽になる」と。その背後には「世間も子どもも、親というものに期待し過ぎる」風潮があるのだと言います。それと同じことを言っているようで、実は真逆な論を展開しているのが、江原啓之氏の連載「家族の正しい関係」の第5回「『毒母』は本当に存在するのか」。「婦人公論」における江原氏とは、檻の中の珍獣のようなものでありまして、外敵ゼロの場所で言いたい放題の江原氏に突っ込むというのもやや気が引けますが、読み進めましょう。

 氏のもとに寄せられる親子問題の中でも特に目にすることが多いという「毒母」。「家族の問題はケースバイケース」と断りつつも、こう断言します。「『毒母』に悩む方の多くが、自分の人生がうまくいかないのは母親のせいであると、問題の本質をすり替えています。母親の存在が重いと言いながら、その実、母親がいなくては不安なのです」。その根拠として「親が疎ましいと訴える方に限って、自立して一人暮らしをするという発想に至らず、パラサイトを続けていたりする」のだそう。

 氏の主張をまとめますと、“いろいろな個性を持つ者同士が共に暮らせば多少ぶつかるのは当然のこと。それもこれも自立への必要条件であり、親を許せないというのはイコール依存心のあらわれである”。その上での「親のしがらみから自由になることが、自立の第一歩である」。この部分は先ほどの特集と同じ論調です。ただ、「どんな親であろうと、育ててくれたことに感謝すると決めることが大切」というこの言説に、多くの毒親持ちの子どもたちは苦しめられてきたのではないでしょうか。同じ「親から自由になる」にしても、「親は完璧ではないと思ってあきらめる」ことと、「人生がうまくいかないのを親のせいにしない」では、まったく意味が異なります。ここで大事なのは、毒母が存在するかしないかなどではなく、親を親としてあきらめることに自己嫌悪を抱かなくていいということ。

 江原理論に則ると、世の中の悪いことはすべて己の弱い心が引き起こしたとことになり、多くの人は以前に増して悩みを抱えることになりそうですが、そういう人がいてこそのスピリチュアルですから「とんだ自家発電」と笑い飛ばすしかありませんね。はっ、江原氏にアツくなっちゃってすみません!

 今号の特集は「面倒な親との関係に折り合いをつける」。この「折り合いをつける」という言葉に、白か黒かでは語れない、大人の深さがあるのです。ということを江原氏が逆説的に教えてくれたのだと思います。
(西澤千央)

最終更新:2014/03/19 21:00
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