サイゾーウーマンカルチャー『愛の渦』とセックスを嘲笑する私たち カルチャー 映画『愛の渦』レビュー 剥き出しの性欲とセックスを嘲笑する私たちが、突き落とされる『愛の渦』の場所 2014/03/01 19:00 映画乱交愛の渦 中でも見ものだったのは、参加者女性の中で最も容姿に長けるOLのマンコが「実はとてつもなく臭かった」ことを発端にしたいざこざだ。OLよりも容姿が劣る保育士は、その事実を男性参加者から聞くと、鬼の首を取ったかのように振る舞い、彼らをドン引きさせてしまう。わずか数時間同じコミュニティに属するだけの間柄でさえも、「あの女より私の方が、女として優れていると思われたい」と虚栄心を満たしたくなる。その姿は、劇中「愚かなもの」として描かれ、これまた見る者の嘲笑を誘うのだ。 そんな滑稽な描写だらけの本作だが、唯一暗いニートの青年だけが、この世界観に反旗を翻すような行動を取る。彼は、地味な女子大生に恋愛感情を抱いてしまうのだ。それをほかの参加者に罵倒されるも、頑なに折れることない彼の姿は、観客に嘲笑を通り越して苛立ちを、さらには切ないという感情を呼び起こさせる。 性欲を満たしたい――ただそれだけなのに、恋愛感情や虚栄心といった、ある意味“余計”な感情に振り回され、本性をあらわにしてしまう参加者たち。しかし、ニートの青年を見ていると、「でも本当は人なんて、そんな情けない存在でしかないのではないのか?」ということに気付かされる。その問いは同時に、セックスをめぐって揉めごとを起こす参加者を、上から目線で嘲笑おうと、スクリーンに前のめりになっている観客自身にも投げかけられる。 劇中、気まずい雰囲気を「みなさん、スケベなんですよね?」という一言が打ち破るシーンがある。痛烈なメッセージ性のある本作にもかかわらず、意外にも鑑賞後、一戦終えた後のような爽快感を抱いてしまうのは、観客も本性があらわになった「ただのスケベ」でしかないことに、どこか安堵できるからなのかもしれない。 (阿部ふみ) 【公開情報】 2014年3月1日(土)テアトル新宿他にて公開 原作・脚本・監督:三浦大輔 出演:池松壮亮、門脇 麦、新井浩文、滝藤賢一、三津谷葉子 、窪塚洋介、 田中哲司 制作プロダクション:ステアウェイ 製作:映画「愛の渦」製作委員会(東映ビデオ、クロックワークス) 配給:クロックワークス ・公式サイト 前のページ12 最終更新:2015/03/25 18:48 Amazon 『愛の渦』 自称「ただのスケベ」な女必見 関連記事 希望すら残酷な感情だとわかっていても、ね? 『風立ちぬ』の光を信じるの女が変身願望や"はけ口"としてセックスを求めると......『恋の罪』はスッゴイわよ!ブス会にはもってこいのブスムービー金字塔は『ヘルタースケルター』!?「生」と「性」に折り合いはつけられない、不妊症の主婦がセックスの果てに見た希望農家の嫁35歳がモー娘。志願! 女はすべてを捨てて夢を追いかけられる? 次の記事 受話器風iPhoneアクセプレゼント >