エロ・グロ・不謹慎! “発禁”レベルなジャケ写が話題になった洋楽アルバム
そんな彼らが05年9月にリリースした4thアルバム『Hefty Fine』のジャケ写は、超肥満体の男性が全裸姿でこちらをじっと見つめているというもの。男性は段ボール箱の中に入っており、窮屈そうに体を曲げているため、ペニスは隠れている。生々しいことこの上ないジャケ写なのだが、妙な色気が漂っており、一度見たら忘れられない。
実はこのアルバム、最初は肥満の黒人女性をジャケ写にする予定だったという。しかし、レコード会社が人種差別的な問題に発展すると拒否。だったら巨漢の白人男性をヌードで登場させようと、オーディションで募集したところ、カーリン・ラングレーという男性が別の男性にフェラチオしている写真を添えて応募してきたため、メンバーたちは大喜び、即決したという。カーリンはゲイコミュニティにおける、いわゆる“熊系”の男性。そのためなんともなまめかしいジャケ写に仕上がり、世間に大きな衝撃を与えたのだった。
■NOFX『Heavy Petting Zoo』(96)
メンバーたちがまだ高校生の頃の83年に結成されてからというもの、アメリカのパンク界をリードし続けているNOFX。政治的なメッセージの強い曲を手がけることが多く、曲やMVもエンタテインメント・テレビ局である「MTV」には絶対に使わせないというポリシーを持つ頑固なバンドとしても知られている。
そんなNOFXが96年1月にリリースした8thアルバム『Heavy Petting Zoo』は、世間の度肝を抜いた。のどかな牧場小屋をバックに、牧夫がまるまると肥えた大きな羊の陰部を、うっとりとした表情で愛撫するという絵だったからだ。この絵はパンク・アーティストのマーク・デサルボが描いたもので、アルバムのタイトルである「ヘビーなペッティングをする動物園」を表現したもの。一見して牧夫が何をしているのかわからないが、気づくとドキッとしてしまう、そんな絵柄となっている。
実はこの『Heavy Petting Zoo』には、CDとカセットのほかにLP盤もあり、LP盤はタイトルとジャケ写が異なる。タイトルは『Eating Lamb』(羊を食す)で、ジャケットはなんと、牧夫が下半身裸で羊とシックスナインに没頭するというものになっているのだ。こちらもマークが担当しており、かなりの嫌悪感を抱かせるジャケットに仕上がっているが、マニアの間では評判のジャケ写となっている。
■Van Halen『1984』(84)
80年代のアメリカのハードロックシーンをリードしてきた、カリスマバンド「Van Halen」。6thアルバムの『1984』には、爆発的に売れたシングル「ジャンプ」などが収録されており、1,000万枚以上を売り上げる大ヒット作となった。しかし、この『1984』は発売と同時にジャケットがかなりの物議を醸し、イギリスでは問題の部分をシールで隠す処置をした上で店頭に置かれるという騒ぎとなったのだった。
問題のジャケットだが、天使の羽が生えたブロンドの幼児がタバコを指に挟み、遠くを見つめているというもの。アメリカではこの頃、「タバコ」が悪と見られ、規制に向けてのムーブメントが巻き起こり始めていたため、あどけない顔をして天使に見立てた幼児がタバコを吸っているなんてとんでもないという声が上がったのである。手前部分にはタバコが2箱置かれており、「子どもにタバコを吸えと言っているようなものだ」と批難された。
このジャケットは、グラフィックス・アーティストのマーゴ・ナハスが手がけたもので、彼女の親友の息子カーター・ヘルムがモデルとなっている。もとになった写真では、カーターはチョコレートのタバコを指に挟みポーズを取っていたが、「天使が地上に降りてきて、いけないことをやってみた」というイメージでタバコとして描いたとのこと。よかれと思って描いたのだが、結果的に波紋を呼ぶ結果となったのだった。
■Blind faith『Blind Faith』(69)
エリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドが、ジンジャー・ベイカーらと69年に結成したスーパー・バンド「Blind faith」。同年6月に行ったデビューライブでは当時史上最高の10万人を動員したが、メンバーが仲たがいし10月にはさっさと解散してしまったという、伝説のバンドとして語り継がれている。
そんなブラインド・フェイスが69年8月にリリースしたアルバム『Blind Faith』に世間は騒然とした。草原に立つオールヌードの思春期の少女が、ジャケ写を飾っていたからである。少女は金工した飛行機の玩具を手に恍惚とした表情を浮かべており、この飛行機が勃起したペニスを連想させるため、児童ポルノに敏感なアメリカではバンドメンバーの写真を掲載した「もう1つのジャケ写」を用意。こちらをメインに販売をした。
問題の少女をめぐり、「ジンジャーの娘」「拉致されているグルーピー」などと黒いうわさも流れたが、ジャケ写を手がけたフォトグラファーのボブ・セイデマンは「少女から女性へと変化していく、シェークスピアのジュリエットのような清純で無邪気な女を表現したかった」とのことで、両親の同意も得て、膨らみ始めた乳房をあらわにしたヌードを撮影。ギャラは、わずか40ポンド(約7,000円)だったと明かしている。
ジャケ写にヌードを採用するアーティストは多く、ジョン・レノンも『Unfinished Music, Vol. One: Two Virgins』(68)でオノ・ヨーコと共に全裸になっている。2人とも陰部を隠すことなく陰毛もボーボー状態で、ヨーコの乳房がかなり下がっていること、ジョンのペニスが普通サイズなことも話題になったが、レコード店はこのジャケットを流通禁止にしてしまった。
また、あえてグロいジャケ写にして、世間に大きなインパクトを与えようという確信犯的なアーティストもいる。ビートルズの『Yesterday And Today』(66)はその代表的なもので、メンバーがバラバラになった赤ん坊の人形と生肉を体にのせて、楽しそうに笑っているという、ショッキングなものだった。絶大な人気を誇るビートルズのジャケットにふさわしくないということで、発売される直前に回収されたが、一部はすでに出回ってしまい、現在はマニアの間で高額で取引されている。