「父が死んだら兄と決別しようと思う」父親の介護をめぐる、姉妹と引きこもりの兄
大雪が続く。雪国の高齢者の大変さを痛感する日々だ。先日の大雪の後、おばあさん一人暮らしの家の前にだけ雪が残っていて胸が痛んだ。一方、90代の夫婦二人暮らしの家の前は、雪かきがしてあって安心した。隣の人がやってくれたのだろうか。正直なところ、うちの隣が高齢者世帯だったとしても、その家の分まで雪かきできる体力はない。自分の家だってままならなくなるだろう。もっと年を取ったらどうする? 悩みがまた1つ増えた。
<登場人物プロフィール>
高橋 麻子(42)中部地方に夫、小学生の子ども2人と暮らす
黒沢 敏男(86)高橋さんの実父。高橋さんの家から電車で3駅の場所に住む
■正直、また入院してくれないかなと思うこともある
高橋さんの1日のスケジュールは分刻みだ。夕方、パートが終わると電車で3駅先の実家に行き、父親の食事の支度をしているからだ。
「子どもたちが学校から帰ってくるのを待って、子どもたちを連れて実家に行きます。3駅とは言っても、駅までは自転車だからそんなに楽な距離ではないですね。買い物に行って、ご飯を作ってみんなで食べて、父に薬を飲ませて体重とむくみをチェックして帰ります。家に戻ると9時くらい。子どもは出かける前に宿題が終わってないこともあるので、宿題をさせてお風呂に入れて寝かせる。朝に宿題をする日もあります。上の子が塾の日は、下の子を連れて実家に行って、帰ってから上の子の食事の用意をして食べさせて、深夜に帰ってくる主人の食事の用意もすると夕食だけで3回作ることもあります」
ただ、この忙しいスケジュールは週に半分。実家とは30分の距離に住む高橋さんの姉と分担しているからだ。「だから私のやっていることなんて、ちゃんとした介護をしている人からしたら、偉そうに介護しているとは言えないですよ。寝たきりでおむつの交換しているわけでもないし、食事だって父は自分で食べられるから、“なんちゃって介護”なんです」
おどけて謙遜する高橋さんだが、そう言うことで今の大変さやこれからの不安をまぎらそうとしているのかもしれない。高橋さんは小学生の頃に母を亡くし、以来、父親が男手ひとつで高橋さん兄弟を育てたという。結婚してからも、子どもを迎えに行ってもらったり、留守を見てもらったりと、頼れる存在だった父親の様子がおかしくなったのは、2年前。持病が悪化し、入院したことがきっかけだった。