「婦人公論」の「女が嫌いな女」は、まさに読者そのものという強烈ブーメラン
そういえば少し前に奥さんとの別居生活が報じられていましたが、その真相は「夫婦円満だからこそ、互いに自立した生活を認め合う“卒婚”」とのことで、いかに妻を愛し、愛してるからこそ自由にして“あげたい”か、そしてそんなことができるオレって……という結局はこちらもオレオレなトークに終始しております。しかし一体“卒婚”ってなに……なぜ離婚ではないのでしょうか。
最近ではたとえクビでも「卒業」と言えばポジティブに捉えられるという魔法の言葉になっています。「女房には口に出してよく言います。『僕はお母さん(女房のこと)が大好き』『お母さんと一緒にいられて幸せ』とかね。彼女は無言。愛情表現が苦手で、照れくさいんですよ」とノロけていますが、もしかしたら奥様はマジ無言なのかもしれませんよ。別れるならスパーンと金だけもらって離婚したいのに、世間体やらイメージやらで「卒婚」なんていうわけのわからない生殺し状態にさせられて。浮気したらしたで「卒婚したから構わない」などと開き直りそうですしね。女のポックリを邪魔するストレスの元凶とは案外「夫」そのものではなく、自分はいい夫であるという思い込み、「妻を解放するもしないも自分の器量」という、世の男たちの思い込みなのではないでしょうか。「いい夫ハラスメント」、案外多い気がします。
■快挙! 好きな女性有名人の2位に林真理子
続いて紹介したいのは、「私の周りの“女が嫌いな女”」です。これもまた女のポックリを妨げるストレス要因でありましょう。読者アンケート「できれば関わりたくない!ヒンシュク女の生態とは」によりますと、堂々の第1位は「自慢する女」。「高血圧だという夫の健康状態に無関心だったくせに、倒れた夫を看病しつづけたというところにだけ注目させて悦に入っている人(58歳・主婦)」など、もはや特定できそうな細かさ。2位は「上から目線女」、3位以下「口の悪い女」、「セコい女」、「噂大好き女」と続きます。
「イヤな女のエピソード、打ち明けて!」では、さらに具体的にさらに情熱的に、自分を不快にさせる女の行状をぶちまけます。「我が家のことを私より詳しく知っている(61歳・主婦)」「グループ配達のメンバー。誰のものかわからない品物を指さして、『おばさん、あんたじゃないの!』と言った。私のほうがずっと年下なのに(67歳・主婦)」などはジワジワくる内容。かと思えば「17歳のときの自分。友人の彼から付き合ってほしいと言われてうけいれ、友人を傷つけたことが人生の汚点(59歳・無職)」「元職場の同僚。私がプチ自慢をしたら、一緒になってほめちぎってくれたけど、ふりむきざまに舌を出しているのが見えた(60歳・事務員)」など、ツッコミ待ちとしか思えないものも。
一方、「あなたが『好感』を抱くのはどんな女性?」という質問には、「正直でいい人」「『私が、私が』と自己主張しない人」「サバサバしていて的確に物事を表現する人」などのご意見。好きな芸能人でいうと、1位は米倉涼子、2位は意外にも林真理子、3位は八千草薫。反対に嫌いな有名人の1位は和田アキ子、2位にデヴィ夫人、3位泉ピン子。勘のいい方なら、お気づきのことでしょう。この特集に出てくる「女が嫌いな女」、自分が中心でなければ気が済まない、自慢話が激しい、噂好き、悪口好き、いい子ぶりっ子で悲劇のヒロイン症候群……これらはまさに「婦人公論」でよく見るオンナそのもの!! これを「近親憎悪」と呼ばずして、なんと呼ぶ……。
というわけで、「女が嫌いな女」という切り口で読者に鏡を突きつけるというヒリヒリした展開になりました「婦人公論」。でも、そんな女たちの雑誌だからこそ、こんなにも惹かれるというのもまた事実。古脳と新脳の狭間で悩み、悩んでる割には開き直りも早く、最終的には夫のせいにしてスッキリ。ピンピンコロリの道は1カ月2回の「婦人公論」から、で間違いなさそうです。
(西澤千央)