[TVツッコミ道場]

どんな攻撃も通用しないドランクドラゴン・鈴木拓に味わう、「イラつく」という快感

2014/02/05 16:00
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『ドランクドラゴントークライブ 「鈴木拓のトークは俺にまかせなさいっ! ついて来れるか塚っちゃん!!」 』/ジェネオン エンタテインメント

 いま、「炎上芸人」「クズ芸人」が代名詞になっている(?)ドランクドラゴン・鈴木拓。「なんて卑怯な、イヤなヤツなんだろう」と一度は考えたことがある人も少なくないかもしれない。でも、そんな鈴木のイヤ~なところにもちゃんと「理由」があることを初めて知った。1月29日にTOKYO MXで放送された『東西芸人いきなり!2人旅』のドランクドラゴン・鈴木×シャンプーハット・てつじの回である。

 MCを東野幸治、勝俣州和が務める同番組は、2012年5月から2013 年末まで朝日放送で放送されていたもの(TOKYO MXで昨年10月下旬より放送中)。ドランク鈴木×シャンプーハットてつじの場合は、一見、芸人としては「じゃないほう」の地味な組み合わせに見える。でも、だからこそ、ありがちな笑いとは一線を画した、不安定なイライラが巧みに積み上げられ、最終的には不思議な快感に変わっていった。

 同番組に出てみたかったと意気込むてつじが、「めっちゃドキドキする。遠距離の彼女待ってるみたい」と駅のホームで待っていると、列車に乗ってやってきたのは、鈴木。第一印象をカメラに向かって語る場面で、鈴木のコメントは……。

「ものすごくズケズケ言う人だなって印象がありますけど。なるべく敬語で。清水さんに限らず、(※てつじの名前を、どういうわけか『清水さん』と思い込んでいる)、僕はどんな人とも仲良くはなりたくない(笑)」

 最初から感じ悪い度マックスである。

 てつじが、同級生ということでタメ口を提案しても、「でも、同級生でも、さほど気が合わない人もいますしね」。てつじが運転しつつ、距離を縮めようと、「何かいろいろ聞いてよ」と言っても、「車、免許取ったのどれくらいですか?」と面白くなりようがない質問をし、これに対してなんとか会話を広げるべく「一応専門学校出てやから、20歳くらい」とてつじが答えても、返事は「へえ」。イラッときたてつじが、「今オレ、すごいヒント出したんよ。会話続くように。会話の中にな、キャッチボール続くように、ヒント入れたんよ! 『専門学校』てフレーズ入れて(怒)」と興奮しても、淡々と無表情で「へえ~、専門学校通ってたんですね」と返すだけ。結局、「(そこで聞く質問は)『なんの(専門学校)?』や!」と本人が解説してしまうという、悲しいやりとりになっていた。


 お昼を食べてもかみ合わず、公園で遊んでも、2人の距離はなかなか縮まらない。鈴木には、どんな攻撃も通用しない。しかも、鈴木の方は、致命傷を負わさず、地味~に、だが、全て「有効」な技で嫌なところを突き、相手を弱らせていく感じだ。それでも、買い出しに行ったり、シチューを作って食べたり、一緒に風呂に入ったりするうちに、自然と打ち解けてくるのが旅だ。これまで自分の話をしなかった鈴木も、徐々にぽつりぽつりと語り始める。

「(相方の塚地武雅は)最初は(オレと)対等な気持ちでやってたらしい。でも、対等な気持ちでやっても埒あかないから、最近は孫を見るような気持ちで。オレが失敗しても諭すようになった」

 単独仕事が多い塚地が、全てのギャラをこれまでずっと折半してくれていたが、「それが鈴木のためにならないから」と、折半をやめたという悩みも出る。応えるように、てつじも自らの貧乏話とお笑いへの情熱を語る。2人の距離がグンと近づいたように見えた。てつじは優しく言う。

「鈴木くんも、西(関西)おいでよ」
「いや、大丈夫です。西はギャラが安いと聞くんで」

 そこでブレない鈴木。やはりただ者じゃない。普通、会話って、無難なラリーをしながら、相手との適切な距離を探していくものだと思う。でも、鈴木は、無難なラリーは一切しない。かといって、攻めのスマッシュを打つのでもなく、常にどこにくるかわからないヘンな打球ばかり返してくるのだ。相手は意味がわからず憤慨しつつも、その打球を追ううちに、いつしか面白くなってきてしまう。最初はイライラし通しだったてつじも、別れ際には笑顔でカメラにこう語っていた。


「めっちゃ楽しかったです! なんというか、周りをみんな明るくするのが鈴木くんなんだと思いました」

 MC・勝俣いわく、「鈴木は格闘技をやってるから、相手が嫌がるところが好き」らしい。実は相手を嫌な気持ちにさせたり、イラッとさせたり、呆れさせたり、笑わせたりすることすべてが鈴木の計算なのだとしたら……。やっぱり鈴木は嫌なヤツだ。
(田幸和歌子)

最終更新:2014/02/05 16:04
『ライブミランカ ドランクドラゴン トークライブ 「鈴木拓のトークは俺にまかせなさいっ! ついて来れるか塚っちゃん!!」』
イラついてるのを見て楽しんでるからね