メアリー・J.ブライジ、DV男だった父親が刺され危篤でもノーコメント
悲惨な幼少期を過ごしてきたメアリーは、教会に入り浸るようになり、賛美歌を歌って嫌なことを忘れようとした。しかし、現実はつらいことばかりで、16歳で学校を中退し、教会に通うこともやめ、アルコールとドラッグ、セックスをすることで現実逃避するようになってしまった。「悪い環境にのみ込まれたわけよ。あまりにも環境が悪すぎて、どうすることもできなかった。自尊心ゼロで自分のことが大キライ。ブスだと思ってたし……アルコールやセックスやドラッグをしているときは、少しだけ自分がマシだと思えたのよ」とメアリーは明かしているが、ここまで堕ちてしまったのも、本はいえば父親のせいだという気持ちを持ち続けていたようだ。
堕ちるところまで堕ちたメアリーだったが、メアリーのカラオケを録音したテープを偶然聴いたコラの交際相手が、その歌唱力に驚き、「アップタウンレコード」の社長にテープを郵送。とんとん拍子で歌手デビューすることが決まったのだ。1992年、アップタウン・レコード史上最年少かつ初の女性アーティストとして契約を結んだメアリーは、アルバム『ホワッツ・ザ・411?』でデビューし、大ブレイク。その後もリリースするシングルやアルバムは次々とヒットし、これまで9つのグラミー賞を獲得。クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウルと呼ばれるようになった。
成功を収めたメアリーだが、家庭内暴力のトラウマから抜け出すことは容易ではなく、精神的に苦しみ続けていることを明かしている。同じ状況に苦しむ被害者へのエールも送っており、2002年にリリースした『ノーモア・ドラマ』では、DVやドラッグ、ギャングなどの悪環境から抜け出す勇気を持つよう呼びかけ、世界的なヒットを記録。09年には、DVに苦しむ女性を救うシェルター施設「メアリー・J.ブライジ」を立ち上げ、家庭内暴力被害者と共に自身のトラウマを乗り越えようと奮闘している。
還暦を過ぎているトーマスだが、人生をやり直そうと大学に通っていたという。シェリルとの一連のDV騒動でも、今回の事件でも被害者だったことから、過去を反省し、自ら暴力を振るうことはやめていたものとみられている。シェリルの弁護士は、シェリル自身も軽い切り傷を負っていることから「自己防衛で刺した」と無罪を主張しているが、繰り返し刺された首のほかに腕や横腹も刺されているトーマスの方が自分の身を守ろうとしていたであろうことは容易に想像できる。シェリルは殺人未遂で起訴されており、有罪になった場合、終身刑になる可能性が高いとのこと。メアリーが今後、瀕死の父親について、どのようなコメントを出すのかが注目されている。