広尾はなぜ幼児だらけなのか? お受験の暗黙のルールが生み出すビジネス
あけましておめでとうございます。去年は保育園2周年、怒涛のお受験、日々の仕事……あっという間に過ぎていってしまいました。我が身のケアは無理やり時間を作って週1の加圧トレーニングと、忘れた頃にボトックス注射をするくらいで、健康管理もあまりできていません。食事もおいしいと感じて食べるというより、エサを食べているという感覚。ですが、「東京カレンダー」(東京カレンダー株式会社)などのグルメ雑誌を読むと、「おいしい店に行きたいな」という人間としての本能が残っているので、まだまだしぶとく生きられそうです(笑)。
気がついたことなのですが、小学校受験はもちろんのこと、幼稚園お受験も「学校説明会の時子どもを誰に預けるか」という問題が浮上します。学校説明会は平日に行われることが多く、開始・終了時間も学校によってまちまち。専業主婦で子どもが幼稚園にいる間に行こうと思っても、お迎えの時間に間に合わない場合もあります。祖父母が近所に住んでいるならともかく、いない人も多いし、ママ友に頼むのも気が引けますよね。「どこの学校説明会に行くの?」と聞かれて、答えないわけにはいきませんから。学校説明会は両親とも参加したほうが学校側のウケもいいし、試験の際に面接で夫に質問されることも多いので、夫の練習の場としても学校説明会から両親で行ったほうが確実にいいです。そうなるとやっぱり、「子どもは誰がみるのか」が問題。
私も子どもが年中の頃から何校も学校説明会に行きましたが、100人に1人ぐらい子ども同伴がいます。学校によっては「保護者向け説明会なので、受験者やその兄弟はご遠慮願います」とはっきりホームページに記載しているところもありますが、記載していない学校も多いです。書いていないことをいいことに連れて行くと、完全に悪目立ち。幼児教室に通っていれば、子どもを連れて行ってはいけないという“暗黙のルール”を教えてくれますが、記念受験組、お受験に教室は必要ないと考えている一部の親は、会場に入るとすぐに己の無知ぶりに気づかされるはず。「なんで子どもを連れてきているのかしら」という声がヒソヒソ聞こえてきますから(本当に聞こえていました)、いくら空気の読めない保護者でもわかるかと思います。連れてきたとしても、出来のいい子どもならともかく、ふつうの5歳児に何時間も静かにしなさいというほうが無理。子どもは遊ぶのが仕事なので、急に「静かに」と言っても子どもがかわいそうなだけですよね。
そこに目をつけたのが、お受験のための一時保育です。うちの園は定員いっぱいなので、オープンしてすぐ一時保育会員を廃止しましたが、都心の認可外保育園はかなり需要があるはず。学校説明会以外にも、願書購入、願書提出、発表……お受験には子どもを預けないとやってられないことばかりです。幼児教室の多い場所に認可外保育園が多いのは、最初からお教室に通っている子どもの兄弟をアテにして作られています。有名校の近くに、その学校に合わせた幼児教室、そして保育園という図式。場所でいうと広尾が典型的ですね。広尾近辺には慶應幼稚舎、聖心女子学院、東京女学館があるので、幼児教室と保育園が多い。場所柄、小規模のインターナショナルスクールもあり、都心なのに幼児だらけといった印象です。まー、保育園経営目線なので、気づかない人がほとんどだと思いますが。
■ダンスをすると茶化す園児たち
先日、園児のお母様たちと話したとき、あるお母様から認可保育園と駒沢の森こども園との違いを教えていただきました。その方は上のお姉ちゃんを区立保育園に通わせたときに不満があったので、下のお子様はあえて認可外の駒沢の森こども園に入園をさせたのですが、その差は大きいようです。たとえば、クリスマス会で子どもたちがダンスを披露したのですが、区立だと誰も踊らず、踊っているお友だちがいても茶化してしまう風潮なのだとか。我が園は、「できないほうが恥ずかしい」という感覚を持たせているので、踊れる子はみんなから「かっこいい!」と尊敬されます。同じ保育園でも全然違うのですね。園長がスポ根、私がお受験志向なことが相まっているのだと思いますが、お母様に「やっぱり“こまもり(駒沢の森の略)”に通わせてよかったです!」と言っていただいたので、期待を裏切らないよう、お受験の取り組みを成功させないと! 頭もフィジカルもいい園児ばかりなので、心配してないけど。
我が子のお受験が終わっても、お受験園児は続きます。この園児のお姉ちゃんのお受験の面接も、以前このコラムに書いたようなベタな質問ばかりだったそうです。やはりお父さんとの関係が明白になるような質問が飛んでくるので、亭主関白なおうちは受験に不向き。親子ともども日々の生活が試されるのが小学校受験ですよ!
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書に加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では5歳の愛娘の子育てに奮闘中。