メリル・ストリープ、米最大のタブー“W・ディズニーの人種差別主義”を真っ向批判
オスカー史上最多ノミネートされているハリウッド女優メリル・ストリープが、ディズニーの創造主ウォルト・ディズニーのことを「女性差別主義者で反ユダヤ主義者だった」とディスり、大きな波紋が広がっている。
事の発端は、1月7日夜に開催された『ナショナル・ボード・オブ・レビュー2013』授賞式で、主演女優賞を獲得したエマ・トンプソンを紹介する際に、ウォルト・ディズニーがとんでもない差別主義者だったことを長々と語りだしたこと。メリルはこの授賞式に、受賞者ではなくプレゼンターとして出席。今年度のアカデミー賞主演女優賞を競うことになるだろうとささやかれているエマ・トンプソンを紹介するために、ステージに登場した。そして、9分にもわたる長いスピーチを行い、メリルが出演オファーを断った『ウォルト・ディズニーの約束』で主演女優賞を獲得したエマのことを「素晴らしい女優」と褒め称える一方で、ウォルト・ディズニーのことをディスりまくったのだ。
米大手芸能誌「バラエティ」によると、メリルは、「ウォルト・ディズニーは女性が嫌いだった、と彼の仲間が証言していますよね」「ナイン・オールドメンの1人で、チェシャ猫やマッドハッター(『ふしぎの国のアリス』のキャラクター)、ジミニー・クリケット(『ピノキオ』のキャラクター)の生みの親であるチーフ・アニメーター、ウォード・キンボールはディズニーについてこう語っていたわ。『彼はオンナとネコを信用しない奴だった』って」と、ディズニーが誇る9人の伝説的アニメーター、ナイン・オールドメンの1人であるウォードの言葉を引用。続けてメリルは「何億もの人々に喜びをもたらしてくれたと言っても過言ではないディズニーは、おそらく……若干……人種差別主義者の傾向がありました。反ユダヤ主義のロビー活動を支援していましたし、彼の会社の方針を見れば明白ですが、性別に強い偏見を持つ人だったのです」と単刀直入にぶった切った。
そして、ウォルトが、アニメーターとして働きたいと希望する女性アーティストに送った1938年付の手紙のコピーを取り出し、「エマの賛辞にぴったりな手紙を読ませてちょうだい。エマも私みたく“狂犬のように男を食うフェミニスト”だから、きっと喜んでもらえると思うわ」と微笑み、「会社の方針としてアニメーターには若い男性しか採用しない」こと、「女性雇用者の仕事は、与えられた指示に従いながら、透明なセルロイドのシートに墨汁を使ってトレース作業を行い、その反対側に色づけをする」こと、「女性雇用者にクリエイティブな作業は行わせない」ことを明記したウォルトの手紙を読み上げた。
1966年に65歳で他界したウォルト・ディズニーが、黒人や女性を差別していたというのは有名な話であり、会社の重要な仕事は白人男性にしか任せなかったと伝えられている。しかし、男尊女卑や黒人差別が普通だった時代に生きていたからで、ウォルトだけが差別主義者だったわけではなく、仕方ないという考えを持つ人が大半だ。
また、ウォルトは反ユダヤ主義として有名な「アメリカの理想を守るための映画同盟」を立ち上げたり、ナチス映画を手がけたドイツのレニ・リーフェンシュタール監督をスタジオに招いたりする反ユダヤ主義者だったことも知られているが、これも時代を反映したものだという見解を示す者が多く、今さら彼を批難するのは酷だと世間は考えているようである。
メリルの今回の発言についても、「時代が違うだろう」「1938年にしたことを、2014年に批難するのはフェアじゃない」「何億もの人々に喜びをもたらしてくれたと言っても過言ではないディズニーなんだから、静かに眠らせてやれよ」という声や、「逆にフェミニストをバカにしてるように聞こえる。エマの足を引っ張っているようにも聞こえる」という声も出ている。
ウォルトの娘と孫が設立した「ウォルト・ディズニー・ファミリー博物館」もメリルの発言に我慢できなかったようで、Twitterでメリルに向けて「ウォルト・ディズニーの真実について知りたくありませんか? だったら、ぜひミュージアムに来てください。ご案内しますから」と皮肉たっぷりに応戦。先日、メリルがパームスプリングス国際映画祭でサンドラ・ブロックのように自身をGoogle検索すると述べたスピーチにかけて、「あっ、もちろん(ウォルトの真実を)Googleで検索することも可能です」と嫌みも放ち、メリルに対する嫌悪感をあらわにした。
メリルは、アカデミー賞と同じくらいステータスのあるゴールデン・グローブ賞の主演女優賞(コメディー/ミュージカル部門)にノミネートされており、受賞する確率は高いとみられている。ゴールデン・グローブ授賞式は12日に行われるが、もしメリルが賞を獲得した場合、受賞スピーチで今回のディズニー発言騒動について触れるのかが注目されている。