空き家化した義母の家の片づけ、ゴミ屋敷同然の中から出てきたものは……
■空き家になった家から出てきた預金通帳
そんな時、文子さんが急死した。体調が悪いと病院に行き、そのまま入院して5日目のことだった。
「正直なところ、ホッとしました。義母と義姉、2人のことを心配しなくてよくなったわけですから。お義母さんは結構淡々と受け入れていたようです。お義母さんも、お義姉さんが自分より先に亡くなってくれて内心よかったと思っていたんじゃないでしょうか。ただ、それから義母も寝込みがちになりました。自分がしっかりしないといけないという気持ちが折れたんでしょうね。入退院を何度か繰り返して、今は一番上のお義姉さんのところにいます」
文子さんの一周忌が終わり、静江さんと伸二さんは夏休みを利用して、実家を片づけることにした。もう「捨てるな」と追いかけてくる義姉もいない。もともとゴミ屋敷寸前だったので、空き家になってこれ以上近隣に迷惑をかけたくないと思ったのだ。
「もちろん1回で片づくわけがないことはわかっていました。田舎の大きな家に何十年分のゴミが地層のように溜まっているんですから……。今回はとりあえず、ゴミを捨てるだけだと決めていました。目標がないと、とてもやる気にならないんですよ」
“断捨離”とか“片づけの魔法”などというのとはわけが違う。工事現場での肉体労働のような作業を3日間続けた静江さん夫婦は、家に戻ってもしばらくは何も手につかないほど疲労困憊したという。
「まだまだ先は見えません。こんな調子でやっていたら、一体何年かかるんだろうと思うくらい。全部便利屋さんに頼んで、全部捨ててしまえばいいかとも思ったんですが、それもできなくなって……。実はゴミの中から多額の預金通帳が出てきたんです。確かにつましい生活をしていましたが、どうしたらそんな大金を貯めることができたのか。まったくもって不可解です。それとなく義母に聞いてみたんですが、全然覚えていませんでした。こんなにお金を持っていたのなら、私たちも大変な思いをして毎月仕送りをする必要もなかったと、主人と苦笑しました。だって私たちの貯金額よりずっと多かったんですよ。でも、これでいつもお世話になっているお義姉さん夫婦にお返しができました。これまでのお礼と、これからもお世話になるということで、結構な大金を渡してきました。まだまだ残っているんですけど、これはしばらく秘密にしておきます。ほかの義姉たちにバレると、どうなるかわからないので」
ゴミ屋敷から発見された埋蔵金。といってもこの大金は、あくまで義母のものなのであって、決して静江さん夫婦のものではない。静江さんのうれしそうな顔は、自分たちの臨時収入と思っているようにしか見えない。かすかなトラブルの予感。