「ブスが嫌い」と語る毒舌家・坂上忍が、それでも女に嫌われない理由
子役から数えて43年、芸能界の荒波を生き抜いてきた坂上は、仕事に忠実である。「ブスは嫌い」と並ぶ坂上のもう1つの特徴「潔癖症」を生かして、片づけられない女・キンタロー。の部屋を整理するというテレビ企画があったが、「あの顔で片づけられないって」と文句を言いつつも、なぜ散らかるのかの説明を交えながら、黙々とミッションを遂行する。その姿は「ブス嫌いで潔癖な面倒な男」ではなく、「口は悪いけど、頼りがいのあるいい人」に見えてくるから不思議である。最近、坂上は自称ブスな女性から握手を求められるそうだが、男からの冷遇や無視を経験したことのあるブス女性には、坂上の公平な接し方が魅力的に映るのだろう。
意外なところで好感度を稼ぐ坂上だが、悪役としての本分を超えることはない。冒頭の発言は、坂上が不動産物件の間取り図を見た時の言葉である。バツイチで結婚願望がなく、潔癖症のために家に女性を入れない坂上がなぜ家を買うかといえば、7匹の愛犬が自由に走り回れる場所がほしいからだそうだ。結婚願望がなく、極度の潔癖症の坂上は女性を家にいれない。女より愛犬との生活の方が興奮する「変わり者」なのだ。
坂上が独身であることは非常に重要である。坂上の「ブスは嫌い」発言を不快に思う人もいるだろうが、坂上が独身でいることで、「性格が悪いから、結婚できないんだ」とアンチ坂上は溜飲を下げられるのだ。
家族という「保険」を持たない故に毒舌キャラとして愛される坂上忍は、一種のオネエである。彼の人気を支えているのが、「女に上から物を言われたくない」「先を越されたくない」いう女たちの鬱屈であることが、時に切なくもあるのだけれど。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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