捨てられない奇病と捨てすぎる恐怖、極端すぎる「婦人公論」の大掃除特集
■好き勝手に生きた結果の汚部屋
それでは次に片付けられない人の言い訳を見てみましょう。運気が下がる、幸せが逃げる、不健康になるなどさまざまな呪いの言葉をかけられてもなお、汚部屋に住み続ける彼女たち。読書体験手記「汚部屋ですが、何か?」にはその激しい心の葛藤が詳細につづられています。
知人や親戚から「ゴミ屋敷」と呼ばれているというマンションに住む、63歳バツイチ女性。「好きな時に好きなものを食べ、大好きなドラマ『相棒』の再放送を観て、夜は赤ワインを飲みながらバラエティ番組で大笑い」というパラダイスのような生活を送っていた彼女が、結婚相談所経由の恋人を得て、汚部屋生活が一転……かと思いきや、「ありのままの私を見せたい」と汚部屋のまま恋人を招待、絶句されるというブラックコメディのような実話が紹介されています。この人のすごいところは、招待した日の夕飯がカップラーメンとカップうどんだったというところ。もはや汚部屋か汚部屋じゃないかはあまり関係なさそう。その後、恋人とは音信不通になったものの、汚部屋を見直すどころか「キノコやゴキブリにだけは出くわさないように注意して、これからも前向きに過ごしていくぞ!」と謎のポジティブ発言で締めくくっていました。
そのほか、お嬢様育ちの片付けられない母親に育てられたばかりに、自分も片付けられない女になってしまったという女性。彼女もまた「他人に迷惑をかけていないのだからいいじゃないか。自分が建てた家だ。どう使ったところで、文句を言われる筋合いじゃない」とスーパー逆ギレ気味に開き直っています。
千秋やIKKOから見たら、この2人は「気がよどんでいて」「頭の中が散らかってる」のでしょうが、タイトルにもあるように「汚部屋ですが、何か?」なんですよね。『相棒』好き汚部屋女性の恋人は、結婚経験ナシ60年以上実家暮らしというのですから、女性に対する妙な妄想を叩き壊してもらえて良かったんじゃないですかね。その後、女性不信に陥ってる可能性もありますが……。
物を捨てられない、物を捨てずにはいられない、どちらも極端に触れてしまえば同じ病。夫キライも婚外恋愛特集もセックスネタもそうですが、「婦人公論」を読んで常に思うのは、「ちょうどいい」ラインの絶望的な遠さ。出てくる人出てくるネタ振り切れてるので、自分の凡庸さがたまらなく愛おしくなりますよ。そんなこんなで今号の大掃除特集からは「“そこそこ”こそ最善」という裏メッセージを勝手に受け取った次第です。
(西澤千央)