「俺を誰だと思ってるんだ!」hideの実弟が起こした凶暴傷害事件の全貌
12月18日に、62組ものアーティストが参加したトリビュートアルバムの第3弾が発売されるなど、死後15年たってもいまだカリスマ性を失わない元X-JAPANのhide。そのhideの権利を一手に握る実の弟が、身の毛もよだつ傷害事件を起こしていた。その恐怖の一幕を被害者本人が語った。
「俺を誰だと思ってるんだッ!」
10月25日の深夜、騒然とした西麻布のバーにそんな声が響き渡ったという。この声の主は元X-JAPAN・hideの弟・H氏。ガタイのいい男性の制止を振り切って、別の男へ拳を振り続けた。暴行を受けたのは井上秀樹さん。X、X-JAPAN、hide with Spread Beaverと長年にわたってhideを支え続けた元パーソナルスタッフで、hideとの交流を綴った『終わらない絆』(音楽出版社)も出版している。
午前3時、井上さんが友人と飲んでいたバーに、H氏ら3人がやってきたという。ここはhideも生前使っていた行きつけの店だ。2人がここで会うのは初めてではなかった。
「元気だったかー。久しぶりだなー!」
井上さんを見つけるや、自ら歩み寄ってハグをするH氏。およそ1年ぶりの再会に、H氏は上機嫌だったという。その後、お互いの席につき、別々で飲み始めたところで、店員が井上さんに声をかけた。
「Hさんがお呼びですよ」
友人を席に残し、井上さんはH氏の方へ向かった。氏の隣に座るや、何かが落ちてきて井上さんの頭を直撃したという。井上さんは吹っ飛ばされてその場に突っ伏してしまった。しかし、H氏の行動で自分に何が起きたのかようやく理解できたという。H氏が井上さんにつかみかかり、ヘッドロックをしてきたというのだ。井上さんを直撃したのは、落ちてきた何かではなく、むろんH氏の拳である。驚いた井上さんの友人が止めに入るが、H氏の拳は収まらない。
井上さんは身の危険を感じて店を出るが、H氏は追いかけてくる。外の階段で捕まると、小突かれ、頭突きされ、足蹴にされ……。救急車が到着するまで、何十発食らっただろうか。流血してまぶたを腫らした井上さんは、慶應義塾大学病院へ救急搬送された。まぶたを3針縫っただけでなく、脳震とう、全身打撲、手足の痺れ、頭痛など、井上さんは後日もその症状に悩まされることになった。
そもそも2人は20年来の知人だったという。井上さんがhideに出会ったのは1988年。その頃からhideにかわいがられ、やがて高校卒業後に当時のXが所属する事務所に入社し、正式にスタッフとして働き始める。出身が熊本県だったことから「クマ」と呼ばれていた。
どこへ行くにもクマを連れて歩いたhideは、そのかわいい弟分の将来を案じ、また期待もしていた。「お前は世に出ろ」「曲なら作ってやるから」そんな言葉で井上さんを鼓舞していたという。実際、95年に井上さんはhideのスタッフから卒業し、自分の音楽活動をするようになった。それでも仕事上での手伝い、プライベートでの付き合いなど、hideと井上さんの関係が疎遠になることはなかった。
一方で、H氏はhideが亡くなる数年前、井上さんと入れ替わるようにhideのスタッフとなっていた。以前から顔見知りだった井上さんとH氏が顔を合わせる機会はさらに多くなったが、この時点ではH氏は常に優しく井上さんに接していたという。それが一変したのが、hideの急逝だったそうだ。
98年5月にhideが亡くなり、それから数カ月間、残されたスタッフやH氏らと、今後のメンバーの活動、hideの楽曲についてなど、話し合いが何度となく持たれていたという。
それまでhideと多くの時間を共有していた井上さんは、意見を求められると、「hideさんはこう言っていた」「hideさんならこうすると思う」と伝えていたそうだ。hideの遺志をなるべく正確に伝えようと務めていた。だが、それに肉親であるH氏が噛み付いた。スタッフ大勢がいるところで井上さんの顔面を殴るなり、「さっさと田舎に帰れ」と吐き捨てたという。
それで2人の関係が切れたワケではなかった。H氏は、hideの死後、彼の権利関係を扱うなど音楽業界で仕事をしており、一方の井上さんも同業だ。顔を合わせることも少なくなかった。H氏は虫の居所が悪いと、その度に、井上さんに手を上げてきた。これまでは我慢していた井上さんだが、今回ばかりは許せなかったという。
「今回は死の恐怖を感じましたし、このようなことが続くと、僕だけじゃなく、ほかの人にも危害が及びかねないと思って被害届を出しました」
井上さんの被害届を警察は受理。12月16日にH氏は書類送検され、検察の判断を待つことになった。H氏の周辺で話を聞くと、粗暴なのは井上さんに対してだけではないことがわかってくる。音楽業界関係者が語る。
「彼のパワハラがひどいためにスタッフも入れ替わりが激しい。彼の周りにはもうイエスマンしかいません。暴行現場でH氏を止めなかったことを警察に咎められたスタッフは、『僕らに社長を止められるワケがない』と力なく答えたと聞きます」
hideの威光を借りて傍若無人に振舞うH氏。天国の兄は、弟の素行に何を思うのか……。