作り手の「お付き合い」事情と「こだわり」が寒々しかった、『FNS歌謡祭』
今回ツッコませていただくのは、12月4日放送『2013 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)。「生歌」にこだわるフジテレビだが、その意気込みは良いとして、実際にはお客様が食べたいものではなく、作り手側のこだわりのみを押し付ける「シェフの気まぐれメニュー」みたいな自己満足番組に見えてならなかった。
数々の「名(迷)珍場面」を挙げてみたい。
■果てしないAKB48、EXILE、Kis-My-Ft2、ももいろクローバー地獄
どのアーティストとのコラボにもついてくるAKB48、EXILE、Kis-My-Ft2、ももクロ。
しかも、槇原敬之×Kis-My-Ft2、ナオト・インティライミ×Kis-My-Ft2北山宏光・藤ヶ谷太輔・玉森裕太、ゆず×SMAP・香取慎吾など、歌のうまい人たちとのムリヤリコラボは「よりによって」感満載。
特に、谷村新司×デーモン小暮閣下×AKB48×SKE48×NMB48の「昴」は、『NHK紅白歌合戦』では男性歌手が勢揃いして歌う、終盤の最大のクライマックス「あ~あ~」のコーラスをAKB一派が歌うという台無しっぷりだ。コラボ相手の歌声を全部消してしまう、ももクロや香取のジャイアニック唱法も強烈。どうせなら事務所ごと、レコード会社ごとなどのコラボに留めておけば、他者を巻き込まず、被害も小さく済んだろうに……。
■「やってみたけど歌えなかった」カラオケ率の高さ
コラボというより単なるカラオケに見える曲多数。そんな中、スキマスイッチ×和田アキ子×ナオト・インティライミのコラボでは、和田アキ子の歌の外しぶりが衝撃的だった。近年は鐘を鳴らす安定の歌ばかり聞いていただけに、ちゃんとしているイメージがあったが、意外。あまり練習していないのか、素人がやる「カラオケで歌ってみたけど、この曲やっぱよく知らなかった」みたいな感じに見えた。
また、ハードな高音域を求められるゆずと組んだ香取も、本人の音域と合わず、部分的に1オクターブ下になったり戻ったりの繰り返しで、「カラオケで入れてみたけど、キー変えられないし、後戻りできない」パターンに見えた。
■誰もうれしくない下品なコラボ
郷ひろみ×ゆず×乃木坂46のコラボでは、郷・ゆずの3人のおじさんに、乃木坂のメンバーが腕を絡めたりするという「下品な接待」が繰り広げられた。ただし、乃木坂メンバーは“おっとり集団”のため、この手の「接待」が似合わない。また、若い女の子との絡みをスマートにこなす郷ひろみは良いが、気の毒なのは、照れてしまうゆず(特に岩沢厚治)だ。
特に、乃木坂のピアノ上手&学業優秀の「優等生」キャラ・生田絵梨花が、シャイで硬派なゆず・岩沢にしなだれかかる場面は、まるで遊び上手な取引先の社長(郷)に連れて来られたフリーランス(岩沢)の席に、事情があってキャバクラバイトをしなきゃいけなくなった優等生がついたような状況に見えた。どちらも可哀想すぎる。
■噛みあわない司会者
お色直しをして、マイクを忘れて出てしまった滝川クリステル。プロとして考えられない大失態だが、その横で自分のマイクを貸すわけでもなく、マイペースで話し続ける気の利かない草なぎ剛クオリティ。クリステルの白く薄い顔の皮膚に、イラッとした静脈が浮かび上がるのが印象的だった。
■飯島&エイベックスVSジャニーズ戦争勃発
EXILE、キスマイなどのエイベックスグループと、俗に言う「飯島班」の露出の多さに対し(Sexy ZoneとA.B.C-Zは短かったが)、KinKi Kids、TOKIO、V6、Hey!Say!JUMPは、長時間座らされた挙げ句、持ち歌1曲と数秒コラボのみの出演。嵐は“客寄せパンダ”として名前を使われ、まさかの収録1曲披露だけ。これには「飯島&エイベックスVSジャニーズ」の戦いが始まったという声も上がっている。
この番組に出て、番組を見て、楽しかったのは、果たして誰なのだろうか。放送局やさまざまな事務所の意向と「お付き合い」ばかりが際立つ不気味な番組だった。
(田幸和歌子)