カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「DRESS」12月号

突如「サイエンス」企画スタート! 知的に見られたい「DRESS」の悪あがき

2013/11/21 16:00

 ホストもゲストも理系の学者様なので、肝心なところで話が猛スピードで進むんです。お互いの専門ではないフェルメールの絵については、ものすごく細かく説明しているので、こちらもイメージしやすいのですが、肝心の科学の話になると、お互い基礎知識があるので、猛スピードで話が進んで、立ち止まらない。正直、微分がなんなのかすら覚えていない文系読者は置いてけぼりです。対談形式にして読者に寄り添うのなら、片方は素人にすべきだったのではないかと思います。そうすれば自然と難解な部分は立ち止まって丁寧に説明をしてくれたことでしょう。

 「DRESS」読者に求められているだろう知性を、読者の知性に合わせてトーンダウンしようと対談にしたけれど、人選がハイソすぎて、結局簡単なんだか難しいんだかわからない内容になってしまったって感じです。

■なりたい自分がわからない40代女性

 見開き2ページの小さい企画「さあ、あなたもおしゃれ地図を描いてみよう!」を読んで、しょんぼりしてしまいました。ファッションエディター・大草直子さんがやっているスクラップにならって、「読者のみんなも雑誌で見かけた素敵なスタイリングやヘアメイクのカットを切り抜いて、スクラップブックに貼り付けてみようよ!」っていう内容なんですが、これ10代の雑誌ですか。切り貼りしてコメントをつけてみたら、「こういう人になりたいんだ! ということに気付く」とか……。おしゃれに没頭している20代なら、可愛らしい作業でしょうね。「なりたい人」なんてのもいるでしょう。

 しかし、自分の周りのアラフォーは、毎日仕事であっぷあっぷ、「仕事の本を読むのが忙しくて、趣味の本なぞ読む時間がない」と言っています。ファッション誌を読みあさって切り抜きしてる40代……。こんな歳になって、まだなりたい自分がわからない40代……。現役社会では人生の先輩よりも後輩の方が多くなる年代です。人の上に立つ地位にいる人もたくさんいるはずです。それなのに「こんな人になりたいなー」とか言っちゃったら、後輩はがっくりでしょう。言っちゃ悪いけど頭悪そうです。

 10~20代の時に、ファッションや美容に夢中になった人でも、40代になればそこそこ熱が冷めて落ち着いてくるものです。家庭や仕事に忙しくなると、自分のことばかりにかまけていられないし、知識や経験が増えて、自分の魅力を外見に頼る割合が低くなってくるからでしょう。そうした女性に向けたファッションを提案しなければならないのは、「DRESS」の抱くジレンマでしょうね。

 それから、最近ニュースを賑やかしている高級ホテルやレストランの偽装事件。これらの発端はマスコミのグルメ記事のあおりのせいじゃないかと思っていますが、まあそれは置いておいて、「そうだ、『肉の都』京都、行こう!」では、京都の牛肉がおいしいレストランをジュウジュウと紹介しています。なんか今月の「DRESS」は、「今宵、サイエンス・バーで。」もそうだし、有名なコピーのタイトルが多いですが、大丈夫でしょうか。

 女性誌は京都が大好きで、やれ御利益のある寺だパワースポットだ、おいしい店だ、高級土産だ小物だと、おしゃれで風情があって、歴史もあるし行くだけで教養が身につきそうな気がする街だと取り扱います。この企画でも、まさに「DRESS」らしく、お昼に1,000円じゃ済まなそうな、入店にドレスコードがありそうな素敵なお店がぞろぞろ載ってます。

 そういえば、サイゾーウーマンでも似たような名前の連載「そうだソルティー京都、いこう」があります。片や高級肉、片やしょっぱい観光地。京都の扱われ方は、媒体の方向性をよく映すものかもしれません。
(増井涼子)

最終更新:2014/01/09 18:17
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