突如「サイエンス」企画スタート! 知的に見られたい「DRESS」の悪あがき
先月のニューヨーク特集から一夜明けた今月号、バブル後の「DRESS」(幻冬舎)は一体どんな方向に向かっているのでしょうか。 バブルは続いているのか、もしくは弾けてしまったのか……。特集記事のタイトルを拾い読むと、「私たちが選んだ、海そば暮らし」など、やっぱりちょっとバブルな匂いが漂っています。早速読んでいきましょう。
<トピック>
◎私たちが選んだ、海そば暮らし
◎今宵、サイエンス・バーで。
◎さあ、あなたもおしゃれ地図を描いてみよう!
■「ファッション誌に理系企画」の魂胆
この数カ月、徹底してテコ入れをしている感がある「DRESS」。林家正蔵がゲストと夜の街でデートするという謎の連載「林家正蔵の美女と“ほろ酔い”東京『夜』散歩」 も今月号で最終回を迎えました。そして新たに始まったのが、「今宵、サイエンス・バーで。」。中島らもさんですか? いいえ、この連載は、杉山明日香さんという理論物理学博士の方が、毎回ゲストを招いて科学をテーマに語ってくれるというもの。今月号のゲストは、『生物と無生物のあいだ』(講談社)の著者で生物学者の福岡伸一さん。知的なにおいがぷんぷんします。これぞ「お金も知識もリッチなアラフォー」のための企画です! しかもどうやら対談場所はニューヨークだったみたいなので、先月号のバブルの残り香が漂います。
テーマは「フェルメールと動的平衡」。このタイトルを読んで、「ああ!」と何かひらめく人はいるのでしょうか。私にはまったく何のことだかわかりません。わざと難解なタイトルをつけて、中身を読ませるという手法かと思い、読んでみたんですが……。もう一度読もう。……読み終えた。……もう一回読もうかな……のループに陥りました。
この企画の趣旨は痛いほどよくわかります。「かっこいいアラフォー」のためのファッション誌として華々しく創刊され、注目を集めたにもかかわらず、結局誰も「かっこいいアラフォーが読むファッション誌ってなんだ?」ということがわからず、ほかの雑誌がやるようなことをしても「知性がない」とか「こんなんじゃない」と厳しい評価を与えられてしまっている「DRESS」。そこで、もう脳みその溝がギシギシいいそうな知的ページをドーンと持ってきたのでしょう。ニューヨークで何らかのツテができたのかもしれませんし。
この企画、必死に読んで思うのは、「高尚な気はするんだけど、わかった気になれないから、誰にも話せない」ということ。2~3日たって誰かに話をするとしたら、「フェルメールはラピスラズリを使って描いたらしいよ」という、本題に入る前の前哨戦部分だと思います。
対談って、口語体に近いから、読みやすさはあります。小説でいえば会話文が多いライトノベルみたいな。しかしその分、「そうですよね」とか「うーん」とか、会話っぽい無意味な文章を挟むため、情報に厚みはない。この「サイエンス・バー」を対談にしたのも、文系女にとって敷居の高い科学を、より身近に読んでもらおうという姿勢なのではないかと思うのです。それは知的なアラフォーを名乗るに当たってとても便利な企画ではないかと思います。でも1つだけ、どうして? と思ってしまうことが。