ビヨンセ、盲目の妹を想う姉の願いに応えてコンサートでデュエット披露
ウーマンパワーをアピールする曲や自立する女性を応援する曲、女性讃歌などメッセージ性の強いヒット曲を多く持ち、世界中の女性たちの憧れと尊敬の的となっているビヨンセ。彼女は、多くの少女たちのアイドルでもあり、YouTubeには、ビヨンセになりきった少女たちが歌ったり、踊ったりする動画が数多く投稿されている。
今年4月からスタートした、3年ぶりとなるワールドツアー『ザ・ミセス・カーター・ショー』では、ファンの近くで歌いたいというビヨンセの希望に沿う形で、ステージから客席に延びたキャットウォークが設置されている。これまでこのキャットウォークで、興奮したファンから叩かれたり、尻を触られたり、上半身裸の男に抱きつかれ観客席に引きずり落とされそうになったりと散々な目に遭ってきたが、8日に開催されたオーストラリア・パースのコンサートでは、少女と触れ合える素敵な舞台となった。
今、ネットで話題となっている同公演のビヨンセの動画は、「イレプレイサブル」のメロディーをバックに、きらびやかなブルーのボディスーツを着用したショートヘアーのビヨンセが、キャットウォークの中央で立ち止まる場面からスタート。ビヨンセは、「ここに特別なヤング・レディーがいるのよ」と言いながらしゃがみ込み、最前列にいる少女に向かって、「ビューティフル、みんなに名前を教えてあげて」とマイクを向ける。目が不自由であるように見える少女は戸惑いながらも笑顔を見せ、「ソ、フィー」とゆったりとした口調で答え、ビヨンセは、「みんな、ソフィーにハローって言うのよ」と観客に促す。
ビヨンセは彼女を見ながら、「ソフィー、お願いがあるの。この曲を歌うの、あなたに手伝ってほしいのよ」「“トゥー・ザ・レフト”と歌ってくれるかしら?」と言い、身を乗り出しながら懸命に聞いていたソフィーはうれしそうにうなずく。その様子を見たビヨンセも笑顔になり、「ワン、ツー、スリー、フォー! トゥー・ザ・レフト、トゥー・ザ・レフト!」と歌い、ソフィーにマイクを向ける。ソフィーは音程を外しつつも、しっかりとした口調で「トゥー・ザ・レフト、トゥー・ザ・レフト!」と歌う。リズムをとりながら聞いていたビヨンセは、「イエ~イ!」と大喜びし、「もう1回よ、ソフィー! 歌って!」とマイクを向け、再度歌ったソフィーから曲を引き継ぐ形で、「イレプレイサブル」を熱唱。ソフィーの顔を見つめ、頬や顎、髪の毛に優しく触れながら歌い、ソフィーはビヨンセの手の感触を忘れないように、懸命に記憶に刻もうと真剣な表情を見せていた。
翌9日、豪ニュースサイト「Perth Now」は、ソフィーが盲目で聴覚や筋力にも問題を抱えていること、大好きなビヨンセのコンサートを最前列で楽しむことができ、ビヨンセとプチ・デュエットができたのは、彼女の姉が7カ月前にビデオを作り、ビヨンセに送ったからだと報道。
同サイトの取材に応じたソフィーの姉エリーは、「困難が多すぎることから、今まで妹がコンサートに行ったことはありませんでした。だから、私はソフィーのビデオを作ったんです」「ソフィーはこれまで本当につらく大変な思いをしてきたけれど、それでも、たくさんのことを成し遂げてきました。多発性硬化症協会のために1,000ドル以上の寄付金を集めたこともあるんです。これらのことをビデオにまとめて、“ソフィーのような素晴らしい人間こそ、あなたのような素晴らしい方に会うのにふさわしいのではないでしょうか”と伝えたんです」と説明。
エリーは、「ソフィーにはできないことがたくさんあるけれど、でも、音楽を愛し、踊ることが大好きで、歌うことも大好き。世の中の人たちに、妹がどんなに素晴らしい人間なのかを見てほしかったんです。姉である私は、ソフィーから多くのものを得ることができました。だから、みんなにもソフィーの素晴らしさを知ってほしかったんです」とも語っており、頑張っているソフィーの存在を、世界中の人たちに知ってもらいたいという願いを持っていたことを明かした。
エリーが懸命に作成したビデオは、NPO法人「チルドレンホープ」で働く家族の友人が、確実にビヨンセのマネジャーに届くように手配。ビデオを受け取ったビヨンセ側は、ソフィーをぜひコンサートに招待したいと申し出た上、コンサートの最中にソフィーを紹介し、プチ・デュエットする計画を立てた。13歳になるソフィーにはこのことは知らされておらず、そのため動画では戸惑った表情を見せていたのである。
動画には映っていないが、ビヨンセは1万5,000人の観客が見守る中、ソフィーにキスもしたとのこと。ソフィーは同サイトの取材に、「ママにね、『ビヨンセからキスしてもらった』と言ったの!」とうれしそうにコメントしていた。
実はビヨンセ、8日のコンサートには40分も遅刻するという失態を犯していた。最近、コンサートに遅刻する大物歌手が増えており、リアーナやジャスティン・ビーバーらは遅刻するたびにファンがTwitterやFacebookなどに不満を書き込み、バッシングする騒ぎとなっている。だが、今回のビヨンセの遅刻をバッシングするファンは皆無で、SNSには彼女のコンサートがいかに素晴らしかったか、最初から最後までノンストップで楽しめたという、ビヨンセを絶賛する言葉ばかりが書き込まれていた。多くの豪メディアは、コンサートが金曜日の夜に行われたこと、内容が素晴らしかったこと、そして、全力投球するビヨンセだからこそ遅刻が問題視されなかったのだという見解を示している。
遅刻アリ、アンコールはナシにもかかわらず、美談が報じられるなど、大成功に終わった8日のビヨンセのコンサート。世界中の観客を魅了し続けるビヨンセの『ザ・ミセス・カーター・ショー』のキャットウォークで、今後も、素敵なドラマが生まれるのではないかと、ファンは期待を寄せているようだ。