変身したのに「普通の中丸」、『変身インタビュアーの憂鬱』の絶妙すぎる“中丸使い”
今回ツッコませていただくのは、10月21日にスタートした、KAT-TUN・中丸雄一の主演ドラマ『変身インタビュアーの憂鬱』(TBS系)。
初めてテレビ雑誌で番組写真を見た時は、何かの間違いか冗談かと思った。ボサボサの長髪と作務衣(?)、老け顔メイクと猫背の中丸は、ほとんどコントのようだったから。しかも、共演は、美人女優・木村文乃のほか、ふせえり、松尾スズキ、眞島秀和、松重豊、岩松了などの豪華脇役陣が揃い、三木聡監督の作品というから、ますます「なぜ主演が中丸?」と思った。だが、1話を見て感じたのは、「中丸しかいない!」ということだ。
中丸演じる「天才トリック作家・白川次郎」は、普段はぼそぼそしゃべりの、むさくるしい長髪男だが、「人は二枚目相手だと口が軽くなる」という持論により、話を聞きだす時には爽やかな二枚目に変身するという設定だ。
一番の見どころは、なんといっても中丸の変身シーン。ボサボサの長髪をファサ~ッとなびかせ、カツラをかぶり、姿勢矯正ベルトをつけるだけで面白いのに、さらに面白いのは、変身後の姿が「普通の中丸」だということだ。
シンプルなのに、すごく新しい。なぜ今までこの発想がなかったのか不思議なくらいだ。「キラキラの爽やか二枚目」設定なのに、とてつもなく普通というおかしさ。これは、いくら演技力があっても、嵐・二宮和也にもできないと思うし(TBS系『山田太郎ものがたり』でキラキラ貧乏を演じていたけれど)、存在感抜群のSMAP・木村拓哉やTOKIO・長瀬智也にもできないと思う。
しかも、変身前のむさくるしい姿の時の、ちょっぴりイラッとするトークが、不思議と普段の中丸と重なるところも素晴らしい。
中丸の一般的イメージは、おそらくKAT-TUNの「一番普通の人」だと思う。常に同じ髪型・顔で、チャラさもなく、ずっと安定の「普通クオリティ」で、「親しみやすそう」「イイ人そう」に見える。それでいて、実はKAT-TUNの中で最も毒舌で、悪気なく失礼な発言が多いと言われているのもこの人だ。
例えば、『シューイチ』(日本テレビ系)での街頭調査で、いきなり「今ヒマですか」と声をかけたり、『カートゥンKAT-TUN』(同)に松下奈緒が出演した際には、「美容のために食べている」と持参したお手製の「酢漬けの大豆」に「マズイっすね」と発言したり……。
さらに、早稲田大学卒業の際、マスコミの囲み取材で記者に「おめでとうございます」と言われ、返した言葉がなぜか「本当に申し訳ないです」。また、「何が大変でした?」と聞かれると、「毎日が大変でした」と答えにならない答えをした挙げ句、「途中で辞めたらファンの人たちから『あいつ辞めたの?』って言われると思ったから、頑張れました」と発言。「ファンを一体なんだと思ってるんだ(笑)」と一部ファンの間で話題になっていた。
性格が真面目で、いい人に見えること、案外正論を言っていることから、憎まれることはなく、スタッフ受けなども良いようだが、発言だけ拾っていくと、結構スゴイ。
その一方で、事務所解雇が決まった田中聖に対するコメントでは、怒りや、やるせない思いのこもった本音の挨拶をし、「グループの精神的支柱」としての存在感を発揮していたし、かと思えば、「中丸君、締めてください」と振られ、「なぬ!?」という、すっとこどっこいなリアクションを炸裂。
「普通」に見えて全然普通じゃない、さまざまな面を持つ面白い人だということがわかってきている。そんな中丸に、今回のドラマはまさにハマり役。今期のドラマの「大穴」になるかもしれない。
(田幸和歌子)