カルチャー
「愛したい」愛を強奪する「愛されたい」自己愛
2013/10/02 20:00
●『わたしはロランス』に学ぶ愛と自己愛
グザヴィエ・ドラン監督による話題作『わたしはロランス』(UPLINK)を鑑賞した。
男性として生まれ、女性になりたいロランスが、恋人の女性フレッドにその思いをカミングアウトする。フレッドは苦悶しながらも、ロランスが女性になるために協力することを決意する。以降、10年にわたる2人の愛の軌跡を描いた約3時間の超大作を前に、めったに泣かない私の鋼の涙腺が決壊し、都合2時間程、人目を憚らず号泣し続けた。
私の映画の見方は、超自分勝手で、言葉や思想、感情表現が自分の琴線に触れるや否や、自分の素養の中の何が反応しているのか、どう反応したのか、ひどい時には映画そっちのけで、思案に没頭する。面白おかしく消費して、結局何も残らない映画には興味がない。心の琴線を容赦なく刺激した後、何カ月も引きずり、何年たっても悶々とさせてくれる「潜伏型ウィルス」としての威力を持つ映画が、私は大好きだ。
本作も潜伏型の、しかも超強力なウィルスである。鑑賞してから10日経った今でも、「フレッド大好き」とか「ロランスの馬鹿」とか、独り言を呟きながらめそめそと泣き続けている。本作には、性同一障害の人間としての尊厳、自分に嘘をつかずに生きる勇気、恋愛と性別を越えようとする大きな愛……
最終更新:2013/10/02 20:22