「笑顔」と「自信」でOK? 「日経ウーマン」産後の職場復帰方法に疑問
その直後に登場する36歳事務職の方の投稿は、8月号で掲載された「電車であまり席を譲ってもらえない」という妊婦さんの投稿に対して、「電車で座りたい妊婦さんは、思い切って自分から座っている人に『妊娠しているので、席を譲っていただけないでしょうか』と声を掛けてみては」というものでした。子連れの母親や妊婦に冷たい日本社会で、なかなか声を上げられないからこそ、誌面でそのつらさを訴えているのに、「思い切って自分から声をかけ、席を譲ってもらえたら、『ありがとうございます』とにっこり笑って座る」方法を提示できるのが不思議で仕方ありません。社会の無関心やシステムの不備のせいで困っている弱者に対して、「困ってるなら頭を下げてお願いしろ」と言い募るこの構図には見覚えがあります。保育園待機児童問題について、
「『子供を持つなということか』『現状のおかしさに気付いて』などと世を恨むかのような態度は、それこそどこかおかしい、どこか的を外している。『お願いです。私達の子育てをどうか手伝って下さい』、これが待機親に求められる人としてのマナー、エチケットというものではなかろうか。」
と言い放った、某区議会議員のブログです。当該ブログは炎上しニュースにもなっていましたが、この投稿についても炎上の予感が……。来月以降の「WOMAN’S TALK」も注目したいと思います。
■妊娠・出産は「人様に迷惑をかけること」?
特集「『産んで働き続ける』ための新ルール」において、本気で出産を考えている女性の役に立ちそうだったのは、「妊娠・出産でもらえるお金はこちら!」「婦人科系トラブルを予防&撃退」等の記事。さすが「日経ウーマン」、日頃から堅実さを売りにしているだけあり、お金やリスクマネジメントに関する話題ではやはり頼りになります。
しかし、今の職場で産んで働くことに悩む読者にアドバイスする「私たち、こんな職場でも出産できますか?」のコーナーでは、社会保険労務士やキャリアコンサルタント等の「働く女性を守る制度や働き方のプロ」が、法律や制度を有効利用する方法ではなく、出産する女性の心構えばかりを説いてくるのに辟易しました。
例えば、「『妊娠したら辞める』のが当たり前の職場です」という相談には、「仕事で成果を出すとともに人間関係を築いておこう。あなたが産休・育休を取得することが、今の職場で女性が働き続ける道を切り開くことにつながります。自信を持って」「『必要な人』になることで、妊娠後も周囲の理解を得やすい」という回答。仕事で成果を出せば、妊娠しても辞めずに済むのか。自信さえあれば、今後職場の雰囲気を変わっていくのか。甚だ疑問です。