「食レポ」番組でおいしそうに食べる杉浦太陽に思う、嫁の料理問題
今回ツッコませていただくのは、2010年10月よりNHK『キッチンが走る!』にレギュラー出演中の杉浦太陽。
毎回キッチンワゴンに乗ってさまざまな地域をめぐり、地元の生産者などと交流しつつ、ご当地食材を使って料理人が季節のレシピを作るという番組だ。最初の頃は、なぜ司会が杉浦太陽なのか、不思議に思えてならなかった。同年3月から9月まで放送された大ヒット朝ドラ『ゲゲゲの女房』に出演していたことで、NHKに気に入られたのだろうとは思ったが……。
フタを開けてみると、これが意外な「能力」の発見だった。番組スタート時にはたどたどしく思えたレポートが、回を重ねるごとにスムーズになり、今ではかなりうまく見える。まずこの人、華奢な顔に似合わず、よく食べる。しかも、実においしそうに食べるのだ。また、生産者や料理人への過剰なリップサービスがないことや、芸人の食レポなどと違い、いちいちうるさいリアクションもしないし、ムダなツッコミをしないところも良い。
食レポをする人って、まず「リアクション」ありきで、自分自身がオイシくなりたい人が多いけれど、杉浦にはそういった気負いがなく、余計なことを言わないだけに、料理の「おいしそう」がダイレクトに伝わってくるのだ。料理人や生産者とのやりとりも、礼儀正しさと距離感の近さとの塩梅がほどよく、どこかしら「甥っ子」みたいに見える。
さらに、最も意外だったのは、杉浦が「おいしいもの」や「おいしい食べ方」をよく知っていること! 9月6日放送分では、畑に行くや、うれしそうに一言。
「ロマネスコだ!」
ロマネスコとはカリフラワーの一種なのだが、花蕾を手でもいで、そのまま口に放り込んだ杉浦は、こう呟く。
「ロマネスコは甘いですね。このままマヨネーズつけて食べたいな」
また、ゼブラナスをそのまま齧ってみて、「かったっ(硬い)! 噛めなかった……めちゃくちゃ実が詰まってますね」と感心したかと思うと、調理後には素直な感想を漏らす。
「魚の身みたいー。身質が魚にそっくり。厚切りにする意味がありますね」
ナスなのに「魚」。ほど遠いけど、油を吸った実がぽろりとほぐれる様子は、なるほど、魚ねえ……と、わかる気がする。食レポにありがちな擬音語・擬態語をあまり使わず、もっともらしく聞こえる表現や、小難しい用語も使わず、「直感」で表現する。それが非常に「おいしそう」なのだ。
ところで、杉浦太陽といえば、「ウインナーだらけの料理」で有名な辻希美の夫であるだけに、普段からジャンクフードばかり食べていそうなイ メージを持っている人も多いと思う。だが、プライベートとは別に、仕事でさまざまな地に行き、生産者たちとの交流を通して「おいしいもの」を知り、学んでいった結果が『キッチンが走る!』のレポートにあらわれている。
そう思うとなおさら気になるのは、「ウインナーだらけの料理」を杉浦が日々、どんな顔で食べているのかということだが……愛があれば何でもおいしいってことか。
(田幸和歌子)