女社会だからこそ? 我が園での保育士の不思議な行動
保育園は良くも悪くも女性の社会。最近は男性の保育士も増えたましたが、保育園で働こうと考える男性は女性の中で生きていける器用な男たちで、保育士の本流はやっぱり女なのです。私は顧問やコンサルタントの経験はありますが、一般的な正社員として働いた経験がないので、保育園経営を始めてから暗黙の女子ルールに面食らいました。パーコン(パーティコンパニオン)やキャンギャルはやったことがあるけれど、男の視線を意識した業界な上に仕切るのは男性スタッフなので、女のイヤな部分は見ずに済みました。ちなみに女子校出身で女の裏も表も知っているため、女子嫌いです。娘には反動で共学しか受験させないという、筋金入りの女子苦手。今回は女の社会、保育園版をお伝えしたいと思います。
保育士のカーストは、典型的な年功序列です。四大卒で幼稚園教諭免許を持っていようと、若い保育士は年齢が一番上の保育士にはかないません。保育士の資格さえあれば、四大でも短大でも専門でも出身校は関係ないのが実態です(※編註)。保育園のカーストを説明すると、
年齢が一番上の保育士
↓
押しが強い保育士
↓
自己主張しない保育士
↓
女性有資格者バイト
↓
男性保育士
↓
無資格バイト
といったところ。経営者としては、男性保育士は長く会社で働いてくれそうなので採用したいと思っていますし、自己主張しない保育士は冷静な判断ができる人間であることが多いので、大事にしたいと思っています。上記のカーストは、会社の評価ではなく、あくまでも現場での話です。
我が園は勤務時間がはっきりしていて、8時間労働を超えれば残業代が出ます。以前、保育士の求人サイトを作っている会社の方とお話をした時、「離職率が高い理由は、先輩先生との関係」だと断言していました。詳しく聞くと、「先輩が帰らないと、先に帰れない」「ずるずるサービス残業する日々」など、先輩先生との関係によって労働状況が過酷になるらしい。それでなくても、子ども相手で肉体的にハードな仕事なのだから、8時間勤務が限界だと思うのですが……。
■生理用品を捨てるにも気遣い
保育園を始めてから、ずっと謎に思っていたことがありました。風水が好きな私は、どんな日でも毎日、社長自らトイレ掃除をしているのですが、いつも汚物入れを使用した形跡がないのです。保育士はバッグや化粧ポーチを持ってトイレには入らないので、生理日の処理が謎。一体どうしているのでしょうか? 保育士と遊びに行った時に聞いてみたところ、使用済みのナプキンはトイレットペーパーでぐるぐる巻きにして、ゴミ箱に捨てているとのことでした。
保育園のゴミ箱は、赤ちゃんのおむつ(おむつ処理専用のビニールで包んでいるので不衛生ではありません)や、給食の食べこぼし、紙タオルなど、いろいろなゴミでいっぱいです。そこに紛らせて捨てるのは、確かに名案かもしれません。掃除のおばさんが掃除をしているなら、彼女たちは気を遣わないのでしょうが、社長が掃除をしているので気を遣っているのかもしれませんね。とはいっても保護者がトイレを使用することもありますし、アクティビティの先生が使うこともあるので、汚物入れの存在をなくすことはできませんけど。
普通の会社でもあると思いますが、有給を使って旅行をしたら、日帰りだったとしてもおみやげを買って帰らないと許されません。ディズニーランドでさえ、おみやげ必須です(笑)。女社会だとおみやげ選びにも気を遣うため、そのことばかり考えてのびのび遊べませんよ! 私が旅行に行くときは大変です。「ランコムのマスカラお願いします」「アナ スイの化粧下地がいいです」……みな、遠慮はしません(笑)。
一番怖いのは、「恒例おみやげ」を負担に感じているスタッフがいること。おみやげ廃止も考えましたが、みんな自分からやめる勇気がないので、結局はなくならない気がします。おみやげは女社会を円滑に生きる上でのマナーになっているため、どうしようもない感じです。ちなみに婿は出版社の大衆ママ雑誌の編集部で働いているため、スタッフのほとんどは女性です。旅行に行くと毎回「おみやげ買わないと……」とモジモジしているので、女社会で生きる男にもおみやげは必要なんですね。「おみやげとかありえないでしょ」とガツンと言うなんて、よほどのS系S級のイケメンじゃないと女社会では許してもらえないのかも。今後、男性保育士を入れるつもりですが、オバさん要素がないとなじめずに辞める気がします。大丈夫かなあ。
※編註:幼稚園教諭免許状を取得するには、一般的には幼稚園教諭免許の取得ができる教職課程のある大学や短期大学で必要単位を修得し卒業する。保育士資格を取得するには、大学、短期大学、専門学校などの指定保育士養成施設で課程を修了するか、または保育士試験を受験する。
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では5歳の愛娘の子育てに奮闘中。