「E.T.のような手」の改善に励む!? ないものねだりを辞めた「美ST」
■中年女の身体には、E.T.や人面魚がいる!
その象徴的な企画に、「ああ、“細ぶちゃいく”な私が怖い!」があります。“E.T.のような手”“蛇のような首”“干ばつ地帯のようなかかと”“人面魚のような膝”“梅干しのようなひじ”など「細部(さいぶ)」の「ぶちゃいく」を改善しようという企画です。さらに細かく「舌が白い」「切っても切っても気づくと鼻毛が出てる」「足の小指の爪が消滅寸前」「おへそが醜い」といったお悩み相談のページもあります。こんな程度なのですよ、実際の40代は。必死こいて美容に励んで、もしかしたらバラ色の未来が開けるかもしれなけれども、大抵はそんなドラマチックなことは起こりません。ないものねだりはやめて、現実と折り合いをつけていくということ。その中で美を求めるということ。そういう生き方も悪くない。というか、これから40代になる世代は、バブル世代と違って今までずっとそういう生き方を強いられてきたわけですから、そうなるのも当然の流れなんです。
老眼が回復するトレーニング方法や予防方法などを紹介する「老眼にだって未来はある!」という特集や、「お笑いのDVDを見る」「なわとびやジョギングなどをする」といった手軽なストレス解消法を紹介する「『イラッ!』としたときにすべき84の方法」という企画にも通じるものを感じました。小さくまとまってしまっているといえばその通りではありますが、これが中年女性のリアルなのです。
読者投稿欄にあった2名の感想を抜粋します。
「私は今、自宅療養している夫を支える毎日です。(略)主人が病気をする前は、ほとんどノーメークだった私ですが、優しい息子たちのためにも夫のためにも、そして自分のためにも『介護で疲れた人』に見えないように、身なりに気を配るようになりました。毎朝鏡に向かうひと時は自分に気合いを入れる作業であり、テンションが上がる時間です」
「5年前にうつ病にかかってしまいました。(略)美ST8月号にも掲載されていたキックボクシングに初トライしてみることに! 汗をかいてスカッと爽快、ぽっこりお腹も日に日にすっきり。ストレス解消にもなって最近では夫にも『楽しそうだね!』と言われます」
投稿者は50歳、47歳ですが、「美ST」読者はイケイケばかりじゃないのですよ。筆者は最近、美容に対するモチベーションが著しく下がっていました。がんばったところで大した成果は出ないし、イイことも起きないし、そればかりか「イタい」と言われるだけだし。美容に一体何の意味があるのだろうと考えていました。美容の意義を遠く高いところに設定していたのかもしれません。女磨きは床磨き。自虐ではありません。女も床も磨いた方が気持ちがいいし、長く暮らしていくためには大切なことだし、磨いたからってとびきり素敵なことは起きないけど、パートナーはちょっと喜ぶかもしれない。そのくらいでも構わないのかもと、今月の「美ST」を読んで思いました。
(亀井百合子)