「僕の話、聞いてました?」東野幸治、NHKに盛り立てられて照れまくり
「芸能界入って25年以上ですけど、やっとここまできました」
なんだか苦節○年な、歌手や俳優みたいな言葉だが、これ、8月2日放送の、NHKのトーク番組、『スタジオパークからこんにちは』に出演した東野幸治が、トークの冒頭に放った言葉だ。
番組MCの伊藤雄彦アナにも言われていたが、トーク番組のゲストというのが珍しい東野。「自分の話も照れくさいもんですし」と、理由を語る。その人物の核心を見抜く力のシャープさは、東野と有吉弘行がツートップだと思っているが(東野のそれが存分に発揮されたのが、TBS系『あらびき団』だったかと)、そんな東野なだけに、トーク番組で自分を語るという行為は、「照れくさい」以外の何ものでもないのかもしれない。
だから、観覧客に「感じよく」手を振った直後、
「『あ、オレ偽善者や』と思いました」
と言う。これが東野だ。伊藤アナもそんな東野を、
「目が笑ってないです」
と、指摘する。こういうところも有吉と共通か。冒頭の「やっとここまで」発言も、いかにも大した気持ちがなさそうで、そこを笑いにできるバランスがうまい。
今回は、自身がMC を務めるNHKのクイズ番組『国民総参加クイズSHOW! QB47』の番宣を兼ねた出演ではあるのだが、東野の「笑ってない目」は、「NHKのバラエティ」という、独特の空気を冷静に観察していた。途中、何度も「新鮮」だと口にして、
「静かなベテラン初老のカメラマンが、僕をニヤニヤしながら撮ってる感じがなんか楽しくて」
と、日頃出演している民放バラエティと違った空気感を指摘。
「大体こんなこと言うと、(民法では)初老のカメラマンを誰か抜くんですけど」
なるほど。確かに別のカメラでその「初老のカメラマン」が抜かれ、スタッフが爆笑するようなカットはいかにも想像できる。
「誰も(カメラマンのカットを)抜かないNHKのちゃんとしたところが、僕はいいと思います」
簡単に想像できるぐらいの作りは、安易でもあるということか。東野の照れくささからくるツッコミは、続く。東野の人気が出たきっかけとして、かつての大人気関西ローカル番組『4時ですよ~だ』(毎日放送)を、アシスタント役の米田弥央が紹介している途中で、
「ダウンタウンさんの大きな傘の下に、我々がちょこっと入って」
と、あくまでもこれはダウンタウンの「伝説の番組」であり、自分や今田耕司、ほんこん、板尾創路などは、ダウンタウンありきの存在だったと強調する。どこまでもへりくだる東野。そこへ、米田が
「お笑い界に東野さんが革命を起こしたという証言をですね」
とさらに大仰に語る。
「ちょっと待ってください。あの、僕の話、聞いてました?」
進行を止める東野。へりくだりたい東野なのに、伝説やら革命やらで真面目に盛り立てられてしまい、「照れ」を増幅させていく感じがまた、面白い。
「NHKさんの悪いところで、台本通りにいこうとしすぎですよ」
という東野だが、一連の指摘に、
「はい待ちます」「聞いてました」「ごめんなさい」と、いちいち即座に肯定する米田も、それはそれで面白い。そんなこんなでエンディングだ。視聴者からの質問にいくつか答えた後で、
「そんなにアップにしなくて結構ですよ、気色悪い顔ですから」
と、自虐的に言いながら、残り数秒で、
「最後、お茶飲みます」
と、お茶をストローで飲む顔で終了。最後まで、「照れくささ」と戦う東野さんでした。
(太田サトル)