やくみつる氏に聞く、血のつながらない子どもを持つという選択肢
やく 山奥の小さな村で一生を完結してしまうかもしれないので、いろんな機会を与えてあげたい、選択肢を広げてあげたいという気持ちはあります。もしかしたら、あの中で暮らした方が一番幸せなのかもしれないですけど……。
――実子を持たず、フォスターペアレントになるというのも選択の1つですね。ただ周囲から、なにかと言われやすい。
やく 懸念するのは老後ですよね。カミさんは今、お母さんのような立場で、若いお相撲さんと遊んでいるんですが、そういう生活を私の没後も続けられればいいなと思います。
――2人で、今後のライフプランや楽しみについて考えていますか?
やく ライフプランに限らず、長期的スパンで物事を考えられないんです。考えて3日先。いよいよ仕事が厳しくなってきたら、世間の印象から消える前に、都議会議員になれと言われてます。国会議員は難しそうですが、「都議や区議なら当選の目がある」とカミさんが真顔で言い始めましたね。昔は上野の似顔絵描きになろうと思ってたんですが、あそこは縄張りがあって、容易によそ者が入っていけないらしいんですよ。もちろん、出馬するなら「みなさまのために、残りの人生を捧げたい」と、それなりの理由づけをしますけどね。
――やくさんが出馬したら、懐事情がかなり厳しいという……。
やく でもそうなったら、この文面を削除してくださいよ(笑)。
――立候補する前に、ご連絡ください(笑)。最後に、結婚を選択することに意味が生まれてしまい、結婚自体を悩む世代にひとことお願いします。
やく アドバイスできるような夫婦生活は送っていないのですが、唯一、おのれの経験から申せることは、大局観よりも瑣末なことを一致させる方が先ということ。それは合わせるということではなくて、細かいことで一致する人を最初から選んだ方がいい。寿司ネタの好みだとか、そういった細かいところが一致するということは、ほかにも一致点が出てくる。その数が増してくれば、相当一致すると見なしてよいかと思います。よく離婚の原因に「方向性の違い」や「性格の不一致」が挙がりますが、「細かいところの不一致で別れた」とは聞かない。非常に乱暴な言い方をすれば、細かいところを一致させておけば別れずに済む、ということかもしれないですよ。
(取材・インタビュー=小島かほり)
やくみつる
1959年3月12日生まれ、東京都出身。81年に、「まんがタイム」誌にてデビュー。以後、野球を題材にしたマンガやコラムで人気を集める。豊富な知識と鋭い視点で、近年はコメンテーターやクイズ番組の回答者として人気を博す。日本相撲協会元生活指導部特別委員、日本昆虫協会理事。近著に『国語力』(齋藤孝との共著、辰巳出版)。