やくみつる氏に聞く、血のつながらない子どもを持つという選択肢
――やくさんご夫妻は、月々一定額を特定の地域に支援し、その地域の子どもと手紙を通して交流するフォスターペアレントという制度を利用されていますね。きっかけは、なんだったのですか?
やくみつる氏(以下、やく) 子どもを作らない理由の1つに、大した子になるわけがないという思いがありまして……親が競争社会から関係のない世界に逃げたようなものなのに、子どもを競争社会に送り込むのは忍びない。海外の場合、貧農の子がなにかのきっかけで大統領になるかもしれない、とも大真面目に思ったんです。
――「子どもが大した子にならない」というのは?
やく まず、いじめられますよね。変わり者のマンガ家の子どもは、イジメの対象になること必至。もっとリアルなことは、もし女児が生まれた場合、べっぴんに生まれる道理がない。かわいそうすぎる。
――もしやくさんが会社員だったら、違う選択をしましたか?
やく そうですね、普通に親になってたと思いますね。私の場合、20代が一番忙しく、25~30歳の5年間なんて特にひどかった。ほぼ軟禁状態で、東京にいながら初めて鎌倉に行ったのが40過ぎですから。そのぐらいどこにも行ってなかったんです。だから子どもに関わっている暇がない、とにかく自分が遊びたい。その思いが一番強かったですね。
――フォスターペアレントになろうと言いだしたのは……。
やく 私です。新婚旅行で南米でも一番貧しいと言われるボリビアに行き、貧しいさまを目の当たりにしたのでね。だったら自分の子どもを作るより、こういった貧しいところの子どもに手を差し伸べた方が……と。最初の子は、中米ホンジュラスの子でした。今はもう19歳で、交流は18歳で打ち切りなんですよ。それで去年、2度目ですが彼に会いに行きました。
――どんな手紙が印象に残ってますか?
やく その子と15年間手紙のやりとりをしてましたが、最後まで満足に文字を習得できなかった。そういう子が一生懸命絵を描いてくれましたね。活発に文字でやりとりができたら、もっと面白いんでしょうが、いかんせんそういう教育レベルですからしょうがない。ただ、そういったところにも、援助によって学校が整備され、ちょっとずつ進歩している。それが楽しいですね。毎月決まった額の送金というのは、子ども個人に行くのではなく、集落のインフラを整えるとか、学校を整備することに使われるんです。そこが有益なんです。「善意を施してやろうという崇高な気持ちじゃなくても、楽しいからやってみた方がいい」と広報しているんですよ。実の親は別にいるんですが、縁もゆかりもなかった子に会いに行く大義もできるし、じゃなきゃホンジュラスなんてなかなか行かないでしょう? 月額の上限も決まっているので、巨額な投資をするわけでもないですしね。
――1対1の親子というよりは、その村との関係が築けますね。
やく なので、村に行った時の歓迎ぶりったらすごいですよ! あんな経験ないですよ、村を挙げて歓迎してもらうんだから。次も同じ集落の子を紹介してもらいました。今度こそ彼女を大統領夫人にしなければ。
――なにかしらの成功体験をしてほしいということですか?