“食べて買って遊んで”はNG! 窯元巡って行きつけバーを作る「リンネル」旅特集
リゾートテイストを封印して何を紹介しているのかというと、器の窯元や工芸品の工房めぐり。作り手との会話を楽しみながら器を選び、石窯で焼いた天然酵母のパンをガジュマルのある庭で味わっています。窯率が高い旅です。そして、夜は地元客が集うバーに出向き、「リンネル」言うところの“あったかい島の人たち”と触れ合う。旅のこなれ感がすごい。なぜこんな旅なのかというと、ナビゲーターが、何度も買い付けで沖縄を訪れているショップディレクターだから。間違っても、観光地やみやげ物屋をガツガツ巡ったりしません。バーの紹介ページに、こんな一文がありました。
「旅先で行きつけのお店を作ると、土地への愛着が湧いて、訪れる楽しみも増えるもの」
リンネル女子が旅に求めるものは、旅行者(外部の人)として楽しみを追求することではなく、器の伝統を知ったり地元の人と触れ合ったりして、その土地の内部に片足をつっこんで愛着を持つという感覚のようです。自分の居住地以外に行きつけのバーがあること=その土地に愛着を持つことなのか、そう単純なことではないと思うのですが、「日本のどこかに私を待ってる人がいる」という幻想に安心感があるのは確かでしょうね。
もともとリンネル女子には、「小さくてもいいから一国一城の主になりたい」という願望が強くあります。誌面でもてはやされる人は、大企業勤務や玉の輿マダムではなく、雑貨店オーナーやフリーランスのクリエイター。独立独歩で生きていこうとしている人にとって、心折れた時に逃げ込める場所、癒やされる場所を確保しておくことは大切なのかもしれません。それはきっと野球選手や力士など勝負師が遠征先に現地妻をつくる感覚と似ているんでしょうね。それにしても、3.11以降、沖縄はすっかりクリエイターの“逃げ場”として定着しましたよね。みんな沖縄に頼り過ぎだと思います。
(亀井百合子)