カルチャー
『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』著者インタビュー(前編)

オシャレな暮らし方「シェアハウスブーム」に隠された「所属なし」という若者の孤独

2013/07/13 18:00

――シェアハウスの住人たちに取材をしてみて、世間一般のシェアハウスのイメージと、ここが違う! と感じたところはありましたか? 例えば、「他人同士で一緒に住むと、喧嘩してしまうんじゃない?」「恋人を連れ込んで揉める」とか。

阿部 本を執筆する中で、「誰かが買っておいたプリンを食べた」という理由で喧嘩になったという話は聞きましたが、それくらいですかね。恋人の話は、本当によく聞かれます。でも、それでトラブルになったという話は、ほとんど聞きません。「今日は彼氏を連れてくね」と事前に連絡したり、連れて帰っても最低限こうしようとか、暗黙のルールがあるみたいです。うまくいっているシェアハウスは、住人同士のコミュニケーションが十分に取れてるんじゃないかな。

――シェアハウス未経験者は、例えば「旅行で長時間友達と一緒にいるとイライラする」という感覚で捉えているのかもしれません。

茂原 シェアハウスって、旅行みたいにずっと一緒にいるわけじゃないんですよ。阿部とも、一緒に暮らす前の方がよく飲んでたくらい(笑)。同じ家に住んでいても、平日1週間顔を合わさないこともあります。

 うちは、喧嘩という喧嘩はしたことないです。「ここはこうしない?」とか、建設的な議論やお願いはありますけど。育った環境が違うなぁと思うことはありますね。例えば、阿部はシンクの三角コーナーに、豆腐の入れ物まで入れるんですよ。私はすぐに三角コーナーが溢れちゃうじゃん! と、びっくりしましたね。

阿部 私的には、毎日三角コーナーの袋を捨てればいいじゃん! って思う(笑)。そういうところは、すり合わせていくことになります。

「宅飲み中に本の企画が生まれた」という、阿部さん(右)と茂原さん(左)

――すり合わせていく行為を「面倒」と感じる人は、シェアハウスに向かないですか?

阿部 そうですね、もちろん、他人と暮らすことに向かない人は絶対いると思います。依存心が強い人も向かないかな。やっぱりそれぞれが自立して生活ができる前提がないと、トラブルになりやすいでしょうから。誰かと一緒に住んでいるといっても、両親がいる実家暮らしとの違いはそこですね。

 シェアハウスに住み始めて、すり合わせていく行為っていうのは、他人と住むためには当たり前のことなんだと思い始めました。シェアハウスに住み始めた人はみんな、「他人を受け入れることを知った」と言ってますよ。

茂原 私はまだ結婚していないんですけど、結婚すると、どうしたって暮らし方についてのすり合わせが必要だと思うんです。だから結婚・同棲できる人は、シェアハウスもできますよ。むしろ、恋愛感情がない分、シェアハウスの方が楽。本の中で、佐々木俊尚さんもご解説くださったんですが、シェアハウスには「女が家事をやるべき」といった男女のジェンダーの問題がありませんし。シェアハウスは、結婚・同棲生活のいい練習にもなると思います。

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