芸能兵制度を廃止!? ファンへの映像販売で稼ぐ韓国国防部の焦り
6月末に韓国のテレビ局SBSの時事番組『現場21』が放送した映像が波紋を広げている。
江原道(カンウォンド)春川(チュンチョン)で行われた軍の慰問公演の終了後、公演に出演していた芸能兵士らが私服に着替えて歓楽街に出没、風俗マッサージ店に出入りする姿が放送された。この芸能兵士はSE7ENとヒップホップデュオ「Mighty Mouth」のサンチュであることが判明しており、休暇以外で隊を離脱することが固く禁じられている韓国で、大問題となったのだ。
芸能兵士とは、軍隊の広報を行うための支援要員として活動する兵士で、映画俳優・タレント・歌手といった芸能人が対象となっており、一般人は芸能兵士になることはできない。芸能兵士の仕事は、国軍テレビ、国防ラジオへの出演や慰問公演などで、時には一般人も観賞できる軍隊主催のミュージカル公演などもあり、やっていることは、徴兵前の芸能活動とほぼ変わらない。それらの広報活動と並行して、一般の兵士同様に、射撃訓練や遊撃訓練、夜営といった“軍隊らしい”ことも行う。
「しかし、一般の兵士に比べたら軍の外に出る機会も多く、休暇も多くもらえているという実態があります。土日などの一般の休日を除いて、通常、兵士が徴兵期間中にもらえる休暇日数は勤務態度などにより優遇されたとしても、せいぜい50日前後。ところが芸能兵は150日ももらえていた。また、一般兵が上官や先輩兵からどなられ、いびられながら勤務している間、芸能兵は任務とはいえテレビやラジオ、舞台に立っているので、一般兵とは比べようもないくらい気楽なものです」(韓流ライター)
こういった芸能兵の優遇ぶりは、いわば公然の秘密であった。というのも、国防部は芸能兵士を利用して収益を上げていたからである。
「国防部は芸能兵士に、『広報隊員として任務についている間に制作された番組などの肖像権、著作権、販売権などのあらゆる知的財産権は国防部が有するものである』といった誓約書に署名させ、芸能兵士本人および所属事務所に権利を放棄させており、それをいいことに、芸能兵士が出演した番組を外部に販売して利益を得ています。顧客の大半は、芸能兵の家族やファンクラブで、ラジオ番組のCDは1枚あたり1~2万ウォン、テレビ番組は60分の内容で100万ウォン相当だったといわれています。国防部が潤うには程遠い金額とはいえ、芸能兵士で“はした金”を稼いでいたのは事実。ところが、今回テレビ番組に映像がバッチリと流されてしまったため、国防部も芸能兵士の優遇について検討しなければならない状況に陥ってしまったんです」
今回の報道を受け、国防部は芸能兵士制度の廃止も視野に再検討することを明らかにした。また、今回以外で地方での慰問公演後に、芸能兵士による軍隊の離脱行為も発覚し、16人の芸能兵士への聞き取り調査が行われることになっている。
韓国男児の義務である徴兵。徴兵され、どのような軍隊生活を送るかによって、芸能人の好感度は大きく左右され、除隊後の芸能活動復帰にも影響を与える。そのため、俳優のヒョンビンやユ・スンホなどのように、芸能兵士ではなく、あえて厳しい海兵隊へ志願したり、一般兵と同じ道を選んだりする芸能人も少なくない。
『現場21』の報道により、芸能兵士に関する黒い話が噴出した国防部。今後、芸能兵士制度が廃止されれば、これから徴兵されるアイドルたちには厳しい軍隊生活が待っていることになる。しかし、芸能人も国民。優遇や差別されることなく、義務を果たすことが、1人の人間として必要なことではなかろうか。