コラム
【女のマル秘図書室】

「女はイク演技をする」日本男性に衝撃を与えた、1983年「前代未聞の女の性調査」

2013/07/04 21:00
『モア・リポート』/集英社

■女性のセックス調査の先駆けは「MORE」だった

 セックスに対して、人が実際にどのような意識を持っているのか。多くの人々が興味と関心を持つテーマであるものの、その実態を捉えるのは難しい。人は自らの性について、なかなか語りたがらない傾向が強いからだ。まして、女性であればなおさらだろう。

 セックスの嗜好や意識に関する調査や収集は、アメリカの『キンゼイ報告』『マスターズ報告』『ハイトリポート』などすでに海外ではいくつも試みられていた。日本でも戦前から、研究者の小倉清三郎による『相対会研究報告』や山本宣治による『学生の性意識調査』などがある。しかし、女性の性について絞り込んで調査したものは現れなかった。長らく、女性が自らの性についてオープンに語るということは稀であり、意を決してそうした調査を行おうとする者もなかなかいなかったようだ。個別の体験談のようなものはいくつもあったが、統計的な調査としてまとめられたものが世に出ることはなかった。

 だが1983年1月、ついに女性の性についての調査をまとめた『モア・リポート』(集英社)が刊行された。日本において前代未聞の試みだった。

 調査を行ったのは、女性雑誌「MORE」(77年創刊)。同誌に付録として8ページにわたるアンケート用紙が挟み込まれており、読者である女性が回答して編集部に送付するというスタイルだった。質問は45項目で「自分の性器を見たことがありますか」「あなたの性的な体験は何歳の時で、それはどんなものでしたか」といった質問に始まり、「オーガズムを得たことがありますか。それはどんな感じですか」「性交は好きですか」「マスターベーションは好きですか」などの個人的な感覚や趣向、さらには「パートナーとのセックスに、どんな不満や希望がありますか」「セックスをどんなことと結び付けて考えますか」などの人間関係や関連的な事柄など、性について実にさまざまな問いかけが並んだ。

 このアンケート調査は、80年と81年の2回にわたって実施された。その結果、編集部に郵送されてきた回答は5,770通にも達した。「MORE」の読者は20代がメインだったが、回答者は13歳の中学生から60代の主婦までと広い年代にわたっていたという。

 アンケート結果は、「MORE」誌上で1年にわたって掲載された。そこで発表されたデータに加え、17歳から52歳までの特徴的だった43人の回答と、そのほかの多くの回答の傾向やバリエーション、さらにデータをグラフや表で示し、1冊にまとめたものが『モア・リポート』である。800ページにも及ぶ堂々たる調査報告だった。女性の性について特化した、これほどまとまった調査は、それまで日本ではなかったものである。

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