カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「リンネル」7月号

ライブに犬の散歩……「リンネル」推奨の浴衣シーンが謎すぎ!

2013/06/16 10:00

 さらに「綿絽」を見ると、「愛犬と公園で散歩」とあります。犬の散歩にわざわざ浴衣? それ、いかにも「声かけてください」ということですよね。「ワンちゃんかわいいですね、あなたはおキレイですね」的な声をかけてほしいということですよね。ものほしそうな女にしか見えません! さらに、「男友だちとカフェへ」というダイレクトな表現もあります。なぜ女友だちとカフェへ行く時じゃダメなんでしょうか。女友だち相手じゃ、着るだけ無駄ということなのでしょうか。

 謎のおすすめシーンは、まだまだあります。「綿紬」は「鎌倉など古都散策、語学レッスンに表参道へ」と街が限定されています。地元の駅前留学には着て行っちゃダメですか。そもそも語学の勉強に浴衣の必要ありますか? 明らかに外国人講師を狙ってますよね。「鎌倉」は外国人観光客狙いでしょうか。「オー、KIMONO、ビューティホー!」と言われたいわけですよね、そうでしょう? 「綿透かし織」は「夏フェス、モダンアート鑑賞」と文化縛りです。美術館に似合うようなお上品な浴衣を夏フェスに着ていったら、間違いなく汗でドロドロになるはず。しかし、カジュアルスタイルが多い中で、あえての浴衣――ギャル浴衣や甚平ではなく、お品のよろしい浴衣で目立ってあわよくば……という魂胆ですね、そうでしょう?

 うれしはずかし奇々怪々な浴衣特集。最も謎なのは、そのあとの「知っておきたい 浴衣のキホン」というページで、「浴衣のルーツは湯上がりに着た“ルームウェア”。(略)あくまでカジュアルなシーン限定」と解説されているにもかかわらず、「綿紅梅」のおすすめシーンとして「目上の方のお宅へおよばれ、ホテルのレストランでのディナー」と書かれていたことです。半襟や足袋を合わせて着物風の着こなしをしているので、改まった席でも「アリ」ということのようですが、本当にアリなんでしょうか? ネットで調べてみたら、知恵袋や発言小町でも討論されていました。結論はよくわかりませんが、あえて微妙なチャレンジをしなくても、ふつうにワンピでも着ていけばいいのに……。結局、一番んしっくりきたのは、「空羽織」のおすすめシーン「花火&夏祭り、屋形船」でした。それが一番無難です。

 「リンネル」読者のように、普段「男に興味ない」風のファッションを身にまとっていても、やっぱり女。モテたい、Hしたいという欲望はあります。だけど、「男ウケするファッションばかり考えているそこらの女とは違うのよ、男よりもアートや夏フェスや語学や古都散策に興味があって、着付けもできるレベルの高い女なんだから!」という文化セレブ意識も強い。強いからこそ、夏だからといって安易に露出度を高くするのではなく、あえて露出を抑える浴衣で「レベルの高い私」を誇示するわけです。和装は文化セレブであることを証明するコスチュームなのです。

2回目にして「ナチュラル」から脱線

 先月号から連載が始まった、メイクアップアーティスト濱田マサルによる「ナチュラル美容道」。第2回のテーマは「ホワイトニングのすすめ」。シミのケアをすることの重要性を説いているのはいいのですが、いきなり1万500円もする資生堂の高機能美容液をお勧めした上、さらに、レーザー治療を勧めるという暴挙に出ています!(「リンネル」読者がどの程度美容にお金をかけているか、掲載している商品の価格帯や入ってる広告等を見れば簡単にわかりますよね!?) もはやタイトルの「ナチュラル美容道」は、意味をなしておりません。

 「レーザー!? 怖くないですか」というインタビュアーに対して、「全然。むしろシミがあるのに、ケアも何もしない女子のほうが、僕は怖いけど~」と大きなお世話なひとこと。女の子に対して「怖いけど~」って、ものすごく失礼じゃないですか? 「リンネル」読者は、シミのことより地球のこととかそよ風のこととか手作りジャムのこととか、考えることがたくさんあって忙しいんです! さらに、「レーザーでシミは短時間で見違えるほどきれいになるよ。シミはないほうが、絶対若く見える」と短絡的なアンチエイジングを力説して、最後の最後までレーザー推し。先月の「きれいでいることは、女として生きること。女としての幸せは、恋愛もしたりして美しく生きることだと僕は思うな」という発言に引き続き、今月もイラッときちゃいました。

 オネエキャラなのか、毒舌キャラなのか知りませんが、美容雑誌ならともかく、ナチュラル派で「ふわっとやさしい暮らし&おしゃれマガジン」がキャッチフレーズの「リンネル」においてこの発言は看過できません。人は肌にも懐具合にも生き方にも事情があるのに、悩める女性に対して寄り添う姿勢がまったく感じられない。ほかのページは毒舌要素ゼロという媒体だけに、先日炎上した女性誌「VERY」(光文社)のツイートよりも意地悪だと感じました。

 濱田自身は「アヴェニュークリニック」というところで治療を行っているとのことで、このコラムだけでなくブログやTwitter、雑誌などあちこちでも、そのクリニックの名を挙げてお勧めしています。有名人ブログにありがちなステマっぽい雰囲気も否めません(実際はどうだか知りません)。ただでさえ「リンネル」は、読者の方を向いているのか、広告主を向いているのか、読んでいて判別がつかず戸惑うことがあるのに、結局、連載コラムも取引先を向いてるのかな……と残念な気持ちになりました。毎度のことなんですけど、「リンネル」は誰が何を目的に読んでいるのか、さっぱり見えてこない。フェリシモのカタログで十分じゃね? って思っちゃうんですよね~。
(亀井百合子)

最終更新:2013/06/16 10:00
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