カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「VERY」6月号

内田樹と高橋源一郎が「VERY」を憂う! おじさんたちから見た女性誌

2013/06/06 20:00

■バツ3俳優が到達した夫婦の真理

 さて、夫婦のすれ違いや気遣い、セックスレスや夫婦間の欲情問題について語られた、小島慶子さんとバツ3俳優・六角精児さんの対談も見てみましょう。

 六角さんは、「旦那さんが疲れて帰ってきた時、奥さんの話を聞かない」というのは、旦那さんが自然体であるからだと語っています。とは言いつつ、「『不自然体』で臨まないと、夫婦なんてやってけないでしょ」というのが六角さんの持論のようです。だから、家でも六角さんは「おはよう」「今日もごはんおいしいね」「ありがとう」を欠かさないんだとか。

 しかしこれに気付いたのは、2回目と3回目の結婚の間だったそうです。こうした夫婦間の真実に気づける人は、そう多くはないのかもしれませんね。

 ただ六角さんは、この対談で自分の良い旦那さんぶりを“盛った”ことが原因で、奥さんとケンカになってしまったようです。その一部始終が、「週刊現代」(講談社)の連載「三角でもなく四角でもなく」に掲載されていました。奥さんいわく、家庭での六角さんは「自然体」なんだそうです。なんだか、可愛らしいオチですけれども……。

■全方位モテならぬ全方位恐喝

 さらに今号には、漫画家・西原理恵子さんと作家・桐野夏生さんの対談も掲載されていました。こちらは、「VERY」のことを「人の不安を煽ってさらに物を売ろうとする『恐喝産業』」と西原節が炸裂。「ファッションも仕事も子どもの教育も全方位にがんばっているんです」というインタビュアーに対し、「いえ、全方位に恐喝されてるんです」(西原)、「自由は有料だと思うんです。ダンナさんのお金で服買ってるうちは自由じゃない」(桐野)と、「VERY」の価値観を真っ向から否定するような発言が飛び交っていました。これを掲載した「VERY」は器がでかい。

 3つの対談を読んでみて、「VERY」読者というのは、ファッションページや、モデルのライフスタイルに憧れつつも、そうはなれない自分をちゃんと知っているんだなと痛感しました。「『VERY』モデルのようになれない自分は、変なんじゃないか?」と恐喝され不安にならないためにも、こうした現実的・自己批判的なページが用意されてるんだなと感じた対談特集でした。やはり「VERY」は、毎号、刺激的な雑誌だと思います。
(芹沢芳子)

最終更新:2013/06/06 20:21
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